||| plus alpha

ヤマトはサイに口付けた。
始めは軽く。次第に深いものへと変わって行く。
どちらのものとも知れない唾液がサイの唇からあふれ顎を伝った。

そのまま首筋へ唇を移動させながらヤマトはサイの服の前を寛げると、それに合わせるかのように唇が柔らかさのない胸の間をなぞる。
乳首を乳輪ごと軽く吸い、指はサイのペニスを服の上からなぞった。
サイは息を荒げることもなくただ黙ってヤマトを見ている。
ヤマトがサイのズボンに手をかけた時、されるが儘になっていたサイは初めてその手を拒んだ。

「ダメです」
「どうして」
「ボクは何も感じないのです…本当に」
「わかっているよ」
「ならば、尚更です。貴方が悲しくなるだけだ」
「サイは嫌?」
「…嫌…?」

嫌?ともう一度小さく呟くサイの表情を困惑と取ったヤマトは質問を変えて再び問いかける。
「僕にこうされるのは不快?」
「不快…では、ありません」

サイの返事は思いの外早く、その反応がヤマトを安心させた。

「ならもう少し続けさせてよ」
「でも、」

まだなにか言いたげなサイの唇をもう一度塞いでしまうとヤマトは重ねられたサイの手を降り払う事はせずズボンのチャックを引いた。
サイの手は力なしにヤマトの手から滑り落ちていく。
それが彼の答えだと判断して、サイの萎えたペニスをヤマトは口に含み優しくなぞり上げた。
サイは眉の形ひとつ変えずにその様子を見ていたが、しばらくして目を閉じる。そうしたほうがいいような気がした。



ヤマトはサイのペニスをゆっくりと口に含み舌で丁寧に弄んでいた。
サイの手を優しく握り、時々サイを見てその乏しい表情から僅かな感情を探す。

「隊長…やっぱり、ボクがやったほうが、」

乳首を指で遊ぶヤマトの手を止サイが言う。
こういう事がしたいのなら、きちんと反応できる方が受け身になった方がいいだろうと、サイは思う。

ヤマトは舐めあげていたサイのペニスから口を離し、サイに顔を近付けた。

「サイ、君は僕の事が好きかい?」

サイはなぜそんな事をという様子でヤマトを見つめる。ヤマトは続けた。

「僕はサイが好きだ。だからサイをもっと近くで感じたいと思うしもっと触ってみたいと思う。…できたら繋がってみたいとも」

そこまで言うとヤマトは照れたように少しはにかんだ。
サイは黙って聞いている。

「僕はただセックスしたいんじゃない。サイを抱きたいんだ。君が好きだから、そう思う」

黙って聞いているだけのサイは、しかし戸惑っているようだった。
まだ日も浅い、僅かな付き合いではあるがサイの微々たる表情の変化に気付き初めたヤマトはサイの耳元で囁く。

「だから君が、もし僕に対して同じような感情を持てた時に、その時に僕に触れて欲しいんだ」

ヤマトは少しはにかみながらサイの髪を優しくなでる。
目を見つめると深い黒の瞳がごく僅かに、揺れる。

「さっき…サイは僕が君に触れるのを拒まなかったね」
「はい」
「僕が君に触れても不快ではないと、そう言ったね?」

まるで幼い子供に諭すような口振りでヤマトは言う。
サイがひとつ頷くとヤマトは満足げに笑った。

「その気持ちがもっと強くなってくれたら嬉しいんだ」

そしてヤマトは触れるだけの軽い口付けをサイに落とした。

「今日は、もう止めよう」

そういい、サイの乱れた服を直してやる。
サイを抱きしめ二人横になり、ヤマトは呟いた。

「僕ばかり気持よくなって、ごめんね」

サイは抱きしめ返したほうがいいのか考えたがヤマトの肩に手を回すにとどめた。
体を包むヤマトの体温は暖かく安心する。
そして、そう思う事がきっと「気持ちがいい」という事なのだとなんとなく理解した。




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