LOVE CONFLICT 

〜In Yusuke's case〜
揺るぎない愛







油絵の絵の具をつけてしまったのは偶然。
でも、そんなキミに恋をしたのは必然。




過去に縛られて、何に対しても真剣になれない自分が嫌だった。
また迎えた桜の季節。
キラキラと希望に満ちた新入生は、自分が抱えた闇をより深くするようで、出来ることなら関わりたくないなんて考える程で。



(翔吉だけじゃないのか…。)



既に引越を終えていた翔吉の他にも新入生が入居するとは…。
これから始まる新生活に心を躍らせ、充実したキャンパスライフを送るんだろう…。
自分もそうだったように。



「あれ!?裕介さんも沙耶ちゃんと知り合いなんですか!?」



「知り合いっていうか、さっき絵の具を…」



なかなか進まない筆を振り上げた瞬間。
まさか人に付けてしまうなんて思いもしなかった。
ほんの数分のやり取りだったのに、何故かやたらと印象的なのは何故だろう。



「裕ちゃん。こんな所で寝てたら風邪引くよ!?」



中庭に作り付けてある縁側は、風通しがよくてつい、居眠りをしてしまう。
キミと出会った頃の夢を見ていたら、柔らかいその声に起こされた。



「ん…あぁ…。沙耶?」



「うん。もうそろそろ夕飯だよ。眠たいなら夕飯食べてちゃんと部屋で寝たら?」



心配そうにオレを見つめるキミの瞳はいつだって真っ直ぐで。
『明るいお調子者』が抱えている闇なんて、とっくに見透かされているんじゃないかと思う。



「サンキュ。んじゃ、夕飯食べに行きますか!!今日のメニュー何?」



「コロッケだよ。私の実家でたくさん採れたからって、じやがいもが送られてきて…。和人さんと私の合作なの。」



「やった!!沙耶の手作りコロッケだ♪」



少し大袈裟にしてみせたガッツポーズに、「おおげさだよ」と笑うキミ。
その笑顔に何度救われて来ただろう。



キミが笑ってくれるだけで、何故か救われたような気持ちになるんだ。



そして…。
キミが側にいてくれるなら、自分の過去にも未来にも、逃げずに向き合える。
そんな気にさえしてくれる。


all of me



キミへの想いは揺るがない。


















〜In Soichi's case〜
奪い取る愛






あいつの側にはいつも誰かがいて…。



「あ、創一さんも食べますか?今沙耶ちゃんと裕介さんとでアイス買ってきたんですよ。」



「はぁ!?またお前らかよ…。」



桜庭さんの社交性と翔吉の人懐っこさは、性別を越えて打ち解けられる空気感がある。
部屋が近い事も手伝って、この3人が一緒に居るのはよく見かける光景だ。
ただ、友人関係から恋愛に発展する王道パターンは要注意点。



「あ、沙耶ちゃん。調度良かった!今日夕飯の当番だよね!?実は急用が出来てしまって、少し早いけどこれから夕飯の準備を始めたいんだけど、手伝って貰えるかな?」



「はい。大丈夫ですよ。」



「良かった!助かるよ。」



管理人のカズ兄は、どっちかというと保護者的な立ち位置。
あいつとは10歳も年が離れてるし、他の奴ら程心配は無さそうだ。
けど、年上の大人の男に憧れる女は結構いるらしい。そう言う意味では一番手強い相手だ。



「栗巻さん、夕飯できましたよー。」



「あ、文太さんまたソファで寝ちゃったんだ?」



「そうなの。栗巻さーん、起きてください。夕飯できましたよ。」



「…ん…なに…?まだ眠い…」



「えっ!?あっ…きゃっ!!」



「あぁっ!!沙耶ちゃん!!」



本当に寝ぼけているのか…!?
布団を引き寄せるようにあいつを引き寄せて、何食わぬ顔でいられるのは文太の特権みたいになっている。



「おい、文太!!離れろ!!」



こんなに堂々と、悪びれる様子もなくあいつにくっつけるなんて、正直ちょっと羨ましい。
いつも眠そうでスローペースな文太は何を考えているか分からない分、敵に回したら厄介だろうな。



「ご馳走さま。」


「菊原さん、もういいんですか?」


「ああ、美味しかったよ。そうだ、食事が終わったらアトリエに来てくれ。」


「え?あ、もしかして、出来たんですか!?」



「あぁ。じゃあ、俺は先に行っているから。」



「はいっ!!」



何だよ…その嬉しそうな笑顔は。
しかも、千尋さんと意味深な会話。
これからアトリエで2人きりで何すんだよ。



「沙耶ちゃん、千尋さんと何か打合せ?」


「うん。学園祭の事で菊原さんにお手伝いをお願いしてるの。」


「へぇ…。確か沙耶ちゃん達は劇をやるんだよね!?」


「そうなの。芸大の学園祭なんだから、本格的に…って事になって、音響を菊原さんにお願いしたんだ。」



ピアニストとしての実力の裏には、血の滲むような努力がある。ストイックに練習に打ち込む姿を知っている。
それを感じさせないクールな立ち居振舞いも格好いい。
男の俺でもそう思うんだから、女どもがキャーキャー騒ぐのも無理もない。
だから、千尋さんは一番敵に回したくない相手かもしれない。




此処に住んでいる5人全員がライバルだとしても、絶対に誰にも譲れない。
君の気持ちがまだ決まっていないなら、待っているだけじゃ敵わない。


優しい態度も、甘い言葉も持ち合わせていないけど、君を想う気持ちは誰にも負けない。


だからきっと奪いに行く。


君の心ごと、全部を。





























   
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