03:温度差



あれから私と健司の二人きりの甘い時間を無遠慮に邪魔されてからは、健司は私の隣で笑いっぱなしだし、仕切り直しという雰囲気にも一向にならず、あっという間に時間だけが過ぎていった。
せっかく楽しみにしていた貴重な時間を、赤の他人に邪魔をされたかと思うと最高に苛立たしく、その相手が牧さんだったということにまた無性に腹が立つ。
けれど、時間は待ってはくれない。
帰宅までのタイムリミットが迫り、更に言うと、また次に愛しい恋人とこうして二人きりの時間を過ごせる機会はいつやってくるのか解らない。
学校も違う、部活も過度に忙しい――私たちの時間は何よりも貴重だった。

帰りは駅の改札口まで健司に送ってもらい、私は後ろ髪を引かれる思いで、足取りも重く、落胆と共に駅のホームへ向かうこととなった。

「あーぁ……こうして逢うの、久しぶりだったのになぁ……くそぅ……」

あまり人気のないホームにぼんやりと立ち尽くしながら、電車の到着を待つ。小さく呟いた独り言が、そっと辺りに溶け込んだ。
別に身体の接触があろうがなかろうが、健司と二人きりで一緒に過ごせればそれで良い。
けれど、自分が大好きな相手に少しでも触れたいと思うのはごく当然の感情だと思うし、逆に相手から求められることもまた幸せな瞬間に違いない。

本当に本当に楽しみにしていたんだ、この日を――。
前回、きちんと顔を合わせた時から数えて、もう二週間も経っていた。その間、少なくとも私はこの約束の日を今か今かと待ち望み、彼から都合がついたと連絡が入った時に歓喜したこの気持ちは、きっと誰にも解らない。
たかが恋人同士の逢瀬、しかし私にとっては何よりも大切な逢瀬だった。

こうなったのも全部牧さんのせい。
全部、全部、全部!牧さんのせい!!!
明日、牧さんに会ったらどうしてくれよう……部活、出なくていいかな?ボイコットしても良いかな?

考えれば考えるほど腹の虫は一向に治まる気配はなく、私はやっとホームに到着した自宅方面の電車に苛立ちと共に乗り込んだ。


*


結局、マネージャー不在では部員のみんなが困るだろうと思うと、練習にも顔を出してしまうのが私だった。
朝起きてから、今日は絶対に放課後の体育館には出向いてやるものかと思っていたけれど、習慣とは恐ろしい。こうして慣れないことをしようとすると逆に無性に落ち着かなくて、ズル休みなんて出来やしない自分の生真面目さを呪った。
渋々と、いつもように練習をするにあたって細々とした準備をこなし、備品や機具を手に体育館へと足を踏み入れると、私の姿を見つけた牧さんがすかさず真っ先にこちらへと近寄ってきた。

「あ、あぁ……静、昨日のことなんだがな……」

神妙な顔つきで私に声を掛けてくるが、堂々と無視をしてやった。
申し訳なさそうに顔を覗き込もうとする牧さんに解りやすく背を向けて、黙々とドリンクボトルを所定の位置へと並べていく。
けれど、牧さんは懲りずに私の名前を呼び続けていた。

「あ、あのな……静?」

「……」

「頼む、聞いてくれ」

絶対に返事などしてやらない。
申し訳なさそうな姿勢を見せたところで、今の私には全く通用などしない。何をされても、仮に土下座をされたとしても絶対にダメ!許してなんかやらない。
もう牧さんなんて、このまま困り果てて泣いてしまえばいいんだ。

全面無視を決め込むなど、我ながら子供じみて卑怯な手だということは解ってはいる。解ってはいるけれど、どうしても腹の虫が治まらない私は今、口を開けば牧さんを最高に傷つけてしまう自信があった。ぐうの根も出ない程ひどい言葉でなじり、再起不能にさせ、その果ては今日の練習で使い物にならないようにしてしまうかもしれない。
それ以上に、とにかく牧さんの顔など今は見たくもない。

「怒ってる、よな……?いや……すまなかった。ああいう場合は俺がそっちに向かうべきだったと……」

「は?」

自分の予想とは斜め上をいった彼の言葉に、思わずうっかりと声を出してしまった。
何を――自分の聞き間違えだったのではないかと耳を疑った。ダメだ……この男に何を言っても無駄なのを確信し、ただ呆れ諦める。

そういう問題じゃない。牧さん、そういう問題じゃない!!!
思考回路どうなってる?あなた、よくうちの部の主将なんかやってられるよね。びっくりする。
突拍子もない牧さんの言葉に、またも昨夜の怒りが上増しされてゆく。
余計にイライラしながらも、私はただただ黙っていた。いつもより少しだけ荒くドリンクボトルを置いていることにも自覚がある。しかし牧さんに対して私のこの感情と原因を一から説明するのも、到底諭し聞かせる気にもなれない。

(いいから、もう私のことは放っておいて!!!)

「あっちに行っ――」

「……なぁ神……静の機嫌はどうしたら戻る?」

「!」


――神宗一郎。
第三者の名が牧さんの口から飛び出して、私ははっと振り返った。
すると、いつの間にか牧さんの隣に神が忍びのようにそっと音もなく立っていて、私と牧さんの様子を静かに見つめている。
けれど明らかに神は私たちの様子を面白がっている様子だった。ニコニコと爽やかな笑顔の裏で何を考えているのか読めない、それが神宗一郎という男だ。

何か困り事や相談事があると、牧さんはいつも神を頼る癖をどうにかした方がいい。
神もいつも損な役回りだと気の毒に思うけれど、律義に牧さんの話をしっかり聞いてあげるくらいには彼も本気で迷惑がってはいないということだろう。先程も言ったが、どこか愉しんですらいる。

神宗一郎という男は、自分の嫌なことや面倒だと思うことには絶対に自ら首は突っ込まない。部の中でも他人との距離の取り方が上手く、そういう部分では、私たちはよく似ていた。
ただ――その見識力と洞察力の鋭さが時に怖さすら感じさせた。対峙し意見を交わしてみると、この男には敵わないと、そんな風に感じたことは一度や二度じゃない。

「まぁまぁ佐藤、許してやんなよ。牧さん、悪気ないんだから」

「……神、あんた、面白がってるでしょ?それに、神は昨日の出来事を知らないから、そう言えるんだよ」

「え、知ってるよ?」

「どうして?」

「牧さんから電話で聞いた」

「は?電話?なに?なんて?」

神の口から飛び出した真実が信じられなくて、身体がわなわなと震える。
まさか牧紳一がこれ程までだったとは……!電話で聞いたということは、このへっぽこキャプテン、私と健司との通話を終わらせた後に、わざわざ神にまで電話をかけて報告し相談したってこと?
ほんっと信じらんない!!!

「いや、だからね、佐藤と藤真さんが2人でいるところに電話して呼び出そうとしたら断られたって。佐藤怒ってるかなって。電話してくんなって言われてたの後から思い出した、ってさ」

「……ちっ、うざい」

思わず口悪く本音が漏れた。
小さく打った舌打ちが思いの外、辺りに響いて、そのまま牧さんのほうへ厳しい視線を向けてキッと睨みつける。
すると牧さんはビクッと身体を固まらせて、「本当にすまなかった……」と、再度謝罪の言葉を口にした。海南男子バスケ部の主将ともあろう男が、全くもって形無しだ。

「はぁ……もうやだ……マネージャー、今日付けで辞めていいですか?」

「そ、それは困る!」

「ははっ、これは相当な怒りですよ、牧さん」

溜息交じりに半ば自棄になってそう告げてやると、牧さんがすかさず慌てて反応する。そして、また神は可笑しそうに隣で笑っていた。

「牧さんはさ、佐藤が可愛くて仕方ないんだよ。なんせ一番のお気に入りだからね。それは佐藤も解ってるでしょ?」

「知らないよ、そんなの」

神は怒りに震える私に向かって、相変わらず少し楽しそうに微かに笑顔を浮かべながら私を諭すように言う。その笑顔の裏側に何を思い、何を隠しているのか、私には解らない。
だから怖いっていうんだ。この男は本当に苦手。読めない。

一方、その神の背後には、「うんうん、そうそう」と言わんばかりに、腕組みをしながら堂々と頷き黙っている牧さん。

なに、神任せにしているの?
あぁ、腹が立つ。いかにも他人事のように振舞う牧さんに呆れてものも言えない。
どうして私だけがこうして振り回されないといけないの!
こうして一人で怒って腹を立てて、拗ねて、無視して……私が一人だけ、拗ねて駄々をこねる聞き分けのない子供みたいじゃない!
おかしい……何かがおかしい。
迷惑を掛けられたのは私の方なのに、どうしてこちらの方が肩身の狭い微妙な空気になってるの?おかしい!

「で、でも!私がどれだけ――」

「牧さんもさ、反省してないわけじゃないんだと思うんだよね」

だから嫌なんだ、神宗一郎とこんな風に対峙するのは――こうして静かに淡々と正論を述べて、相手に身動きを出来なくさせる。
神の柔らかい口調と的を得た内容、それに加えてふわりとや柔らかいのに厳しい不思議な空気感、得体の知れない微笑みに、私じゃなくても今まで何人もの人が渋々と屈服させられてきたのだろう。
激しさはないにしろ、これは最大の脅威だと思う。
そんな神宗一郎という味方を付けて、牧さんは本当に狡い。また私の怒りの矛先は牧さんへと向いた。

「牧さん、もう一生!口利いてあげないから!」

「そ、それも困るな……」

「うるさい!」

神にやり込められそうになっているのを焦るように、また牧さんに八つ当たりをする。
私だって解っている。いつまでもこんな風に怒って拗ねてなどいられないことは。
牧さんの天然でどうしようもない部分を今更責めたってどうしようもないことくらい解っている。
でも!言っていくところがないじゃないか!このどうしようもない苛立ちの原因である牧さんにぶつけるくらいしか発散できない。
なのに!こうして自分の器量の狭さを堂々と指摘されると本当にやりきれない。腹が立つ。
あぁ、もう!解ってるってば!!!
二人して、そんな目で見てこないで!

「〜〜っ……牧さん!今回だけですからね……次はないですから!」

「……良いのか?」

困ったように私の表情を伺っていた牧さんの顔が、申し訳なさそうに少し晴れる。
自分でも不服だ、とても。けれど、どうしようもないじゃない。
結局、今日付けでマネージャーを辞める勇気も、牧さんに一生口を利かないなんてことも本当は出来やしないのだから。


再び私は神の方へと鋭い視線を向けると、彼はにこにこと穏やかな笑みを携えて、「ん?」と少し惚けたような表情を浮かべる。
それがまた無性に腹立たしくて、チッと小さく舌打ちをわざとらしく打ってやった。

「ははっ!」

「何?」

「いやぁ〜怒ってるなと思って」

「なに笑ってんの、何が可笑しいの」

相変わらず全く動じず、余裕を振りまく神のその態度は、やっぱり苦手だ。
ほんとやだ、もう。滅びてしまえ!全員!!!
とりあえず今回のこの件を笠に着て、牧さんにいつもより多めのマネージャー休暇をもらうことにしよう。
そうだ、それが良い。


*


その日の夜、私は珍しく自分から健司へと電話をかけて、今日の部活での牧さんとのやり取りを伝えることにした。
一部始終全てを伝え聞かせると、やっぱり彼は大きな声で笑っていた。

「あははは!本当ウケるよな、牧って。でもまぁ、俺的には相当、面白かったから良いけど。そんなどうしようもない天然な主将のいる海南になんか、今年こそバスケでは負けてられねぇな」

「全然笑い事じゃないって!付き合う方の身にもなってよ」

「はははっ!……ご愁傷様」

「他人事だと思って」

正直なところを言ってしまえば、こうして健司が笑い飛ばしてくれるおかげで、昨夜も気まずく変な雰囲気にならずに済んだところは大きいとは思う。
楽しいことには敏感で、自分が面白いと思うことを全力で楽しむのは健司の良いところだといつも感じていた。
もちろん好いた相手だからというところは大きい。けれど私も彼と一緒に居ることがとても楽しいし、飽きない。
彼がこうして楽しそうに笑ってくれるなら、まぁ良いかと妙にあっさりと腑に落ちるのも、やはり惚れた弱みなのだろうか。
神にはあれだけ説得じみたことをされても、全く心に響きもしなかったが、自分の愛する人がただこうして笑ってくれるだけで救われるとは、本当に不思議なものだ。
私にとっては藤真健司という存在が一番なのだと実感せざるを得ない。生活の中で唯一潤いと幸せをもたらしてくれる存在。
そのことを彼を前に直接口に出して言ったことはないけれど、それは私にとって紛れもない事実だ。


「あ、ねぇ、次はいつ逢える?」

「あ〜っと、どうだろうな……またしばらく忙しいんだよな……」

「……そうなの?」

「あぁ、部活もそうだけど、他にも結構予定が立て込んでてさ。また時間出来そうだったら連絡するわ」

「……あ、うん、そっか……分かった」

恋人である彼との、なんの変哲もない会話。
日常的な会話。いつも通り。変わりなく。こんなことは日常茶飯事。お互い忙しい身だし、学校も違えば学年だって違う。仕方のないこと。
こうなることは付き合う前から解っていたことだもの。駄々をこねたって意味はない。

同じ強豪と呼ばれる学校に属し、毎日どういう生活をしているのかなんて確認しなくても解る。だからこそもっと逢いたいだなんて我儘も言わないし、彼にとって何が一番大事なのかも理解しているつもりだ。
恋人として彼のことを一番理解できてるのは私なのだと、忙しい毎日を送りながらも、その合間を縫って私との時間も作ってくれてるのだと――そう思えることが今の私にとっては支えであり、全てだ。

この電話の後、予告通り健司からのお誘いはしばらく無い。
またこうして逢えない日が続き、それをひたすら耐え忍び日々が続くことになった。


なのに――どうして……。

まさか、と思って自分の目を疑った。
彼を――健司を――見かけてしまった。
一瞬にして世界が灰色に固まる。

海南バスケ部の部員たちといつものように集ったファミレスでのひと時の後、駅で解散してそのまま一人、少し寄り道をして帰宅しようと思い立ったのがいけなかった。
学生たちで賑わう繁華街まで足を延ばし、息抜きに買い物でもして帰ろうと改札口を出た瞬間、見覚えのある翔陽高校の制服を着た、数名の長身の男子高校生の姿が道の向こう側に映った。
あんなに長身で目立たないはずがない。遠目からでもその輪の中に健司の姿を確認することが出来た。
けれど、胸が躍ったのはほんの一瞬だけで、その中に同じく翔陽高校の制服を着た知らない女の子も数人混じっているのに気が付いてからはもう駄目だった。

(あ……)

鈍器で頭を一発殴られたような衝撃。
どくんどくんと心臓が嫌な鼓動を打ちながら、じっとりと手に汗を握る。

(別にいいじゃない。同じ高校の友達でしょう?私だって、牧さんたちと出かけたりすることもあるし……)

しきりに自分にそう言い聞かせ、その場でどうにか納得するように暗示をかける。けれど全然上手くいかない。
高校生の男女がグループで行動を共にするなんて、別に特別なことじゃない。よくあること。
私だってこんなことくらいで、いつもは取り立てて嫉妬なんかしない。
なのに今日ばかりは胸の奥がざわざわと靄ついて、全く落ち着きを取り戻せないでいた。

(私って我儘?)

ふと思った。
どうしてそんなに楽しそうなの?私ばっかり我慢して、何も言わずに待って、ただ退屈な毎日を耐え忍んで……なのに、どうして――。

一旦溢れだした感情はマグマのように次から次へと奥底から吹き出し、止まることを知らない。
考え始めるときりがなくて、今まで絶対に表に出さないように努力してきた嫌な黒い感情が顔を覗かせたが最後。もう手遅れ。勢いよく流れ出してしまったものを抑え込む術を私は知らない。
だから嫌だったんだ。だから――見ないように、気付かない振りをしてきたのに。

私と一緒だと滅多に外で遊んだりもしないくせに。
恋人である私が、こんなにも寂しくて冴えない想いをしているというのに。
健司は友達と一緒だと外でそんな風に楽しそうなのだと、自分の知らない女の子に向けてそんな風に笑いかけるのだと、まざまざと見せつけられた気がして酷く気分が悪くなった。
悲しくて、寂しくて、悔しくて。
一気に目頭が熱くなり、鼻の奥がツンとした。じわりと瞼に水滴が浮かぶとそのまま静かに頬を伝い流れる。

――私は貴方にとって何なのだろう……。

恋人としては最低の疑問。けれど思わずにはいられない。頭の中で上手く整理が出来ず、目の前の光景をそれ以上見ていられなくなって目を伏せた。そして、その場から逃げ出すことしか私には出来ない。
偶然を装って声を掛けることも出来ない、ただの臆病者だ。

健司は悪くない。解ってる。全部全部解ってる!
解っているのに、こうして彼を責めるようなことを思ってしまうのは、やっぱり私の器量が狭くて余裕がない証拠だ。理解は出来るのに感情が追い付かない。

ただ寂しくて……今の私にとっては貴方が一番だから――健司と過ごす時間が何よりも大事で本当に大好きだから。
私を退屈な日常から救い出してくれる唯一の人だから。
依存、という言葉がそれに当てはまるとするならば、きっと私は彼に対してそうなのだろう。自覚がないわけではなかった。

だけど本当はね、気が付いていたんだ。
彼にとって恋人という存在が二の次、三の次だっていうことは――。

それでも一緒にいたくて、一緒に笑っていたくて、この想いがあれば寂しくても我慢して乗り越えられると思った。実際に今までだって上手く回せていたでしょう?
嫌なものに蓋をして、見ないように、気が付かないように、そうすることで私はきっと心の平常を保っていたのだと思う。
大好きな恋人に何週間も会えなくても、それでも平気な振りをしておけば、このまま彼との関係性が全て上手くいくと、そう思っていたんだ。

「……ダメだなぁ……もうほんとヤダ……しんどい」

一旦、負の感情を口に出してしまったらもう駄目だった。
自分の奥底にあった本音がすっかり姿を見せてしまい、一気にその感情に心が支配されてしまう。
駆け足でその場から走り去りながら、いろんな想いと感情が渦のように絡まって、私は一体どうしたら良いのか全く分からなくなった。
涙が止めどなく溢れ、息苦しい。はぁはぁと呼吸が荒くなる。それでも私は足を緩めることなくひたすらに走った。
その場に跡が出来るのではないかと思うくらい、溢れ出すものを堪えることが全く出来ずに――。


ふと気が付くと、辿り着いたのは先程まで海南バスケ部の部員たちと一緒に居た、いつものファミレスだった。
目的など決めず、ただひたすらに駆けて辿り着いた場所がここだとは……。
そして咄嗟に鞄の中から取り出した携帯電話。そのディスプレイに表示させたのは、牧紳一の名前と電話番号。そして半ば無意識に近い感覚で、そっと発信ボタンを押した。


(2020.6.6 Revised)



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