第18話 「恩返し」

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side:手越



「えー!?売り切れ!?」


「お兄ちゃん買いに来るの遅いよぉ」



アハハ と購買のおばちゃんが笑ってる。


傘を忘れて購買に買いに来たが、この雨の強さに完売。



「どうしたもんかなぁ...」


まっすーに迎えに来てもらう?
でも今日中学の同級生と遊ぶって言ってたしな...。



まぁいいや、走って帰ろう。



制服ジャケットの下にパーカーを着ておいてよかった。


フードで少しは防げるといいな。




昇降口に行くと、外の様子がよくわかる。



「雨すご...」



「手越くんじゃーん!」

「あれ?傘ないの?」

「貸してあげよっか?」


友達、というか知り合いの女の子たちが帰り際に声をかけてくれる。



「いや、これくらい大丈夫」

「え、結構降ってるから濡れちゃうよ?」

「水も滴るいい男、だろ?」

「はー?何言ってんのー?」


女の子たちは笑いながら帰っていく。


なかなか笑えない状況だけど、俺に傘を貸したせいで女の子が雨に打たれるのを考えると借りるのはちょっと気が進まない。



やっぱりあかりと美優に待っててもらえばよかったかな。





「…つめてっ!さみぃ!」



バシャバシャ、

水たまりばかりの道を小走りで帰る。





「こんな時に信号かよ!もう!」



信号待ちがいつもより長く感じる。



雨の音とフード効果であまり周りの環境がどうなっているのか把握出来ていない。




さすがに雨がすごすぎる。

一旦、どこかで雨宿りするか。




まだ家までは遠いから、学校の近くにある公園に戻ろうとした。





その瞬間だった。





雨に打たれる痛みがなくなる。





「手越くん、」


「…えっ、か...な...ちゃん....?」



突然のことで驚いた。



彼女は息を切らしてる。




「なんでここに?」

「手越くん、傘持ってないかもって」


優しい顔で彼女は言う。



「わざわざ迎えに来てくれたの?」

「もう少し、早く来れればよかった」


ごめんね、と言いながら
俺のフードを脱がせ タオルをかけてくれる。




「お家まで送るよ」



「…ごめんな、わざわざ」

「ううん、手越くんもしてくれたから」


「え?」

「前に、助けに来てくれたでしょう?」


「あぁ、気にしなくていいのに」



転校してきてすぐの頃か。

懐かしいな。



「寒くない?大丈夫?」

「わ、わたしは」

「よかった」

「手越くんは?」

「俺は平気」



全身びしょびしょだけどな。




憂鬱だった雨が、一気にキラキラする。





ーーーーー




この雨の強さに、小さな傘で2人はちょっと無理があったなぁ。



手越くんだけでも濡れないようにしなきゃ。




転校早々助けてくれたのは嬉しかったから…
彼が困った時は絶対に助けたかった。




「今日まっすーいないんだよね」

「あ、そういえば用があるって言ってたね…帰り遅いの?」

「うん、多分」


夕食どうすっかな と彼は考えている。



「あの、よかったら…わたしの家来る?」

「え?」

「お姉ちゃんとかうるさいかもしれないけど」

「い、いいの?」

「もちろん」



いつもはわたしが行ってばかりだから
たまには来てもらうのもいいだろう。




「じゃあ、…行こう、かな」




増田くんのことが気になるのか、少し戸惑いながら答える手越くん。




「いいの?夕飯もいただいちゃって」

「うん、いつもおかず多いから残っちゃうの」

「はは、そっか」



じゃあいっぱい食べるぞー!とテンションをあげる彼。




強くなる雨の中、歩き続けてようやく家に到着した。








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