右目
『え、ちょ、なんで!?……あ』
騒いだものの、思い当たる節が一つ
そういえばピエロと契約した時右目が痛かった
そしてピエロは何かと右目にキスをする
あいつの仕業か
『ピエロめ……』
「きれいだしいいじゃないですか」
『わっ!?』
いつの間に……
どこからともなく現れるピエロに恐怖を覚える
『なんでこんな目にするの』
「契約の証です」
『これじゃおかしいじゃない』
片目というのがおかしさを引き立てている
なんてこった、どうせなら見えないところにしてほしかった
「きれいですって」
『きれいとかそういう問題じゃないじゃない』
「もうそうなってしまったものは仕方ないので我慢してください」
あぁ、でもその眼を失うと力も消えて、死ぬ可能性99%なんで
そんなことを言われてしまっては
もうため息しか出なかった
こうなったものは確かに仕方がないが
元の世界でも、私は異端児だった
黒目黒髪なんていなかった
それが嫌だったが、こっちの世界ではそういうことでもないようで、心のどこかで安心していたのだ
「その眼も役に立ちますから、どうか機嫌を直してください」
そう言って右目にキスをする
契約するといった私が悪いのか
はたまた禁忌といわれる呪文を唱えた私が悪いのか
『むかつくから一発殴らせろ』
「えぇ!?ちょっと待ってくださっ」
床に沈むピエロ
なんだか少し満足した
八つ当たりだってわかってる
でもピエロの顔を見ているとなんだかむかつく
その笑顔がむかつく
『ちょっと、もう一回殴らせて』
「ま、待ってくだっ」
ご愁傷様
そしてありがとう
なんだかんだ仲良くなってきた気がする
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