契約


ふわふわと漂うような柔らかい感触

ふと眼を開けた

『あ……』

目の前には大玉に乗り、ジャグリングをするピエロ



「おや、目が覚めましたか」



気分はどうですか?

なんて聞くピエロに

最悪

そう答えた

そうですか、と相変わらず笑った顔で私を見ていた



「ここに呼んだのには理由がありましてね、きちんと契約の話はしておこうかと」

『それはぜひとも聞いておきたい』



では

そう言って指をならせばテーブルとティーセット

温かい紅茶が入っていた

長くなるのでゆっくりどうぞ

そう言って椅子に座った



「あなたにワタクシの力を貸す代わりに、世界を救ってほしいのです」

『は?』



何を言い出すかといえば、世界を救え

力は貸さなくていい、自分でやれ

そう思った私は別に間違った考えはしていないと思うのだが



「そうそう、このピエロの格好も借り物で本体ではないのです」

『本体はどこに?』

「奥深く、そこに眠っているのです」



少し、悲しそうな、心配するような、何ともいえない顔をする

それでもすぐにいつものにこにこ顔に戻っていた

借り物の力では本来の力が出せないのです

そう言って紅茶を一口



『私に貸したところでそれは同じじゃないの?』

「あなたにはそれだけの器があるということです

あなたに与えた力は2つ、簡単にいえば

生み出す力と消す力

だが、人そのものを生み出したり消し去ることはできない」

『物は出したり消したりできるってこと?

倒れる前に銃が花に変わったんだけどあれはなに?

それに、私は何からどうやって救えばいいの?』



質問なら今はたくさん出てくるだろう

ただ、自分に与えられた力は相当なものだと思った

自分が一体何から救うのか

どうやって救うのか

それが一番の疑問である



「そうです、自然系以外の命あるものはいけませんよ、草木は大丈夫ってことです

生み出すんだから変更も可能なんです、この力は頭の柔軟性が鍵を握りますよ

そして、あなたはその力を持って、戦ってこの世界を救ってほしいのです」


『一体何と戦えと?一般ピープルの私が?』



突然だ

そして無茶すぎる

私、大丈夫だろうか……



「元の世界でも魔物を倒したじゃないですか」

『あの呪文は、家に伝わる術式よ、私はあれと、正反対の呪文しか知らない』

「あの呪文は禁忌ですよ、なぜ知っていたのですか?」

『祖母がね、昔教えてくれたのよ、大事に使いなさいって』



そうでしたか

そう言ってまた紅茶を飲む

人呼吸おいて

ピエロが口を開いた




「この世界に堕ちた神がいるのです

そいつがこの世界を壊さない間に奴を消してくほしい

ですが、向こうもかつては神だった者、力をもってしても簡単には消えないでしょう」



ワタクシではだめなのです

一瞬ピエロじゃなくて、普通の男の人に見えた

でも、直ぐにピエロに戻って、私はおもむろに立ちあがった



『分った!戦う でもひとつ教えて』

「何でしょうか?」

『あなたは神様?』

「あなたが神だと思えば神なのでしょう」



契約の証です

そう言って私の右のまぶたに唇を落とす

そして私は再び目を閉じた

  

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