黒うさけん


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オレの近所の天使ちゃん【高緑R18】
 





ご注意:真ちゃん6歳、高尾15歳という設定で話が進みます。
苦手な方は読まないでくださいね〜
















 オレの家の近所には、天使がいる。
 柔らかな不思議な緑色の髪。見開くと零れ落ちてしまうのではないかと錯覚しそうな大きなエメラルド色の瞳。ふくふくとしていて思わず頬ずりしたくなるような頬。形のいい真っ赤な唇。睫毛は瞳を閉じれば頬にかかってしまいそうなほどに長く瞳を縁取っている。鼻は大きすぎず小さすぎず、均整のとれたそれはそれはもう可愛らしい形。天使はとても容姿に恵まれるって言えばいいのかな。そりゃもう可愛らしくて愛くるしくて美人で、将来が楽しみだと、思っていたものだ。
 緑間真太郎、六歳。男の子だ。繰り返す。奇跡のような美人は男の子だった。
 オレだって流石に、目を疑ったさ。
 こんな可愛らしい生き物が、この世に存在していいのかって。いや、いいはずがない。大変目の保養です、ありがとう神様。あ、オレ神様なんて信じてないんだけど。

 真太郎は大きなお屋敷の子供だ。
 オレはその家のはす向かいにあるごくごく一般的な家庭に生れ育った高校一年生の高尾和成だ。
 真太郎は綺麗なママとダンディなパパと一緒に大きなお屋敷に住んでて、オレの親父がそのダンディなパパの部下ってことで、生まれたての小さな小さな真太郎と引き合わされた。
 六年前だからオレが八つのときの話だ。
 年の近い子供が周囲にいないから、面倒を見てやってくれってな。
 最初に出会った時は本当に天使がいると思った。人より目のいいオレは、真太郎の背中に小さな羽根を見つけたんだ。
 まあ、目の錯覚だったんだけどな。とにかく、目を奪われたっていうか、そんなものがこの世に存在していいのかと目を疑ってしまうくらい見惚れてしまったわけだ。
 言ってみれば一目惚れ。一目見たときから貴方に心を奪われてしまいましたーって言うの? ドラマとかでよくあるじゃん?
 そんなの虚構だとばかり思っていたのに、まさか自分がそんな風に誰かに夢中になるなんて、思わなかった。知らなかった、こんな感情。
 まあ、何だかんだで、この年になるまでずっとこの気持ちを引きずってきたんだよな。
 結構自分的には惚れっぽく冷めやすい性格してると思ってたから、まさかこんなに片思いが続くなんて思ってもいなかった。
 何せ、小さな小さな真太郎の成長を多分真太郎のママの次に長く見守ってるんだから。
 真太郎のパパは、どこぞの商社の会社社長らしく、海外に飛びまくりで中々帰ってこない。
 うちの両親も共働きで親父はそのパパについて出張の繰り返しだったし、お袋は夜が遅いからって、オレや妹ちゃんをはす向かいの緑間家に預けて仕事にいそしんでいた。
 オレも妹ちゃんも小学校の頃から、緑間邸に入り浸りだ。
 子供が大好きだからと真太郎のママはオレ達にも分け隔てなく優しくてこっちはこっちで大好きだった。
 オレも妹も真太郎は可愛いし、ママは優しいしで、すっげー懐いてたんだよな。
 真太郎は真太郎で何故かオレにすっげー懐いてくれてやっぱり可愛かった。
 それで兄弟同然みたいな感じで育っていってさ、毎日天使と遊んで楽しかったんだよなぁ。
 ちょっと反抗期入ってたオレでも、天使はいじめちゃいけない。こんなに可愛い子供を泣かせるのは悪だと思っていた。
 真太郎はちょっと年が離れてたから「おにいたん、おにいたん」ってずっとオレの後をついてきてさ。
 そりゃもう可愛いッたらねーの。すごく甘えっこでさ。傍に居るときは必ずオレの膝の上に乗ってくるんだ。
 小さな小さなオレの天使。本当に可愛くて愛しくてオレの宝物だった。

 けど流石に、オレが高校に進学して、真太郎も小学校に進学してからはなかなか会えなくなったんだ。
 オレはバスケ部に入って毎晩遅いし、朝も中々時間が合わなくて会えない。
 真太郎も小学校に入って友達ができたらしく、最近はそっちばかりと遊んでいるらしい。
 まあ、小学生ともなれば、そこそこ自我も芽生えてくるだろうし、友達ができることはとても喜ばしいことだ。オレだっていっぱい友達いるし、妹だって友達が沢山いる。
 年も離れてるし、そろそろ真太郎もオレ離れするのかな、と思うと寂しい気持ちと嬉しい気持ちとごちゃ混ぜになって複雑な気分だった。
 それでもお互いに生活があるわけだ。
 オレは高校生としての生活に楽しみを見出していたし、真太郎にはなかなか会えなかったが、真太郎は真太郎で元気にやっているんだろうと思えばそれでよかった。彼女とか、作ろうかと思ったけど、そこだけはどうしても真太郎の綺麗な顔を思い浮かべると他が何もかも色あせて見えてダメだったので、バスケに打ち込んでることにして、告白されても断ったりしてた。
 オレのこんな気持ちを真太郎に押し付けるなんてとてもできなくて。多分一生オレはこの気持ちを秘めたまま生きていくんだろう。
 そのうち高校卒業して大学に入って、社会人になって、真太郎も社会人になったときにもしまだずっと好きだったら一度くらい冗談めいたつもりで告白しても笑って流してもらえるだろうか。
 それともやっぱり絶対に真太郎にはオレのこの気持ちなんて伝えない方がいいんだろうか。
 分からない。分からない。分からない。
 オレは真太郎の幸福をずっと祈ってるよ。これだけは本当。
 今はまだ真太郎は小さくて、純粋にオレを慕ってくれている。ああ、年の差が憎らしい。もっと年が近ければ。むしろ同い年だったら、きっと大親友になれたと思うんだ。九歳差は大きい。何だかなぁ。不毛な恋してる感じ。
 そんなこんなで時々部活がオフの時に家にいて、窓の外を眺めると、真太郎が友達と遊んでいるのを見て今日も可愛いなぁと思うだけで終わりだったり、半年くらいすれ違ったまま時間が流れた。その間まともに顔を合わせたのは片手で足りるくらいだ。
 それもオフの時にオレが友達と出かけようと、家を出たところで同じように友達と遊びに行こうとしていた真太郎とばったり出会ったくらいで、頭を軽く撫でてやってまともに話もしなかったりして、本当にそれまでがべったりだっただけに物足りない。
 言うなれば、真太郎不足ってヤツ。かな。
 うん。それでも容赦なく友達はオレのオフを狙って予定を入れてきやがるし、真太郎は真太郎で多分毎日のように友達と遊んでいるのだ。
 ホント、ついてねぇ。はぁ、たまにはあの柔らかな緑色の髪に鼻を摺り寄せて思いっきり抱きしめたい。
 小さな熱を肌で感じたいって言うと、ちょっと卑猥に聞こえるかも知れねーけど、そういう意味じゃねーから!

 そんなある日のことだ。
 真太郎不足で何処かで遊びに行ってやろうなんて考えていた矢先。
 真太郎ママとうちの両親が一緒に真太郎パパのパーティーに出席するってことになったらしかった。
 ついでに妹ちゃんもそれに付いていくけど、オレは部活があって一緒に行けない。真太郎も小さすぎるので(小学校一年だもんなぁ)留守番ってことになって、真太郎をママが帰ってくるまであずかることになった。
 真太郎の方が帰宅は当然早い。オレは部活がどうしても外せなくて、帰りはどんなに早くても十九時を超えてしまう。
 それでもいいのかって聞いたらいいって言ったらしいんで、真太郎には大きなお屋敷で待っててもらって、オレが帰りに真太郎の屋敷によって自宅につれて帰るっていう算段になった。
 母親やママにはくれぐれも真太郎をよろしくって散々言われて、ちょっと苦笑してしまったけど、事情を監督に話したら、早めに帰ってやりなさいなんて優しいお言葉を貰ったんで、オレはいつもよりも早めに部活を上がる事ができた。明日は土曜で学校は休み。だけど部活はあるが、真太郎も学校が休みだから、一日付き合ってあげなさいとも言われて、こんな状況だったのならパーティーとかちょっと行ってみたかったぜとも思ったけど、真太郎と一緒に丸々一日遊べる口実ができてオレは上機嫌で帰途に着いた。

 家の傍まで辿り着いて、そのまま真太郎の屋敷へと足を伸ばす。
 こうやって真太郎の屋敷の呼び鈴鳴らすのも、随分と久しぶりだ。
 そういえば昔はこの呼び鈴に背が届かなくて、妹と一緒に一生懸命背伸びして何とか押そうとしてたんだよな。
 どうしても届かなくて、仕方ないから扉をガンガン叩いて大声でママを呼んでさ、そしたらしばらくの間はオレ達が来る時間帯は必ず玄関の鍵が開けてくれるようになって、お邪魔しますって中に入るときに言えば勝手に入っていいわよって顔パスになったわけよ。
 その後、三年くらいして呼び鈴に触れられたときはマジ感動したよな。
 オレも成長したし、妹も成長した、そして三歳になってた真太郎も成長してた。
 今じゃこの呼び鈴を押すことに何の苦労もしないくらいに身長は伸びた。
 バスケやってるからかどうかしらねーけどオレも無事に百七十五センチの大台を突破してもう少し伸びてせめて百八十センチになればいいのにって思ってる。
 真太郎はまだオレの足の付け根くらいまでしかない。
 小さくて可愛いオレの天使。
 呼び鈴を鳴らした後待っていると、すぐに扉が開かれて、小さな緑色の頭が扉の置くからオレの方に顔を出した。
 相変わらず可愛い。扉の影から顔が半分だけ見えてるのも堪らなくいい。

「真太郎、久しぶりだよな。迎えに来たぜ」
「こんばんは、和にい」

 上目遣いに大きな瞳でジッとオレを見上げてくる。
 手を伸ばして真太郎の柔らかで癖のない髪の毛を撫でる。さわり心地は変わってない。堪らない。可愛い。
 真太郎はギュッと目を瞑ってオレの手に撫でられるまま、しばらく動かない。

「もういつでもオレんち行けるのか? 着替えとかは?」

 コクンと頷いてくるんで、扉の向こうを見れば玄関の脇に真太郎の荷物がまとめられている。
 きっとママがやってくれたんだろう。

「一人で寂しくなかったか?」

 コクンとまた頷く。真太郎を抱き上げて、真太郎の荷物を持ちあげて、屋敷の電気を消す。
 一気に真っ暗になった扉を閉じてから、預かっていた鍵で屋敷の扉を閉めれば、あとはオートセキュリティ任せだ。
 真太郎はオレの首にギュッとしがみついてきて、顔が見たいけど見れないから、そのままゆっくり歩きだす。

「ちょっと重くなったんじゃね?」
「背のびた」
「マジで? 後でどんだけ大きくなったか教えてくれよな」

 コクン。
 何だかいつもより口数が少ない気がするのは久しぶりだからだろう。
 後、一人で大きな屋敷で待ってて寂しかったのかもしれない。
 きっとオレが帰ってくるまで玄関の扉の前を行ったりきたりしてたんだ、真太郎はそういうヤツだ。
 数十歩も歩けば、道路を渡れるしオレの家にも辿り着く。
 真っ暗な家の鍵を開けて中に入り、真太郎を下ろそうとすると、ギュッとしがみ付いてて離れないんで、真太郎の靴を脱がしてオレも靴を脱いで、部屋に上がった。

「なんだよ、どーしたんだよ、真太郎」
「かずにいは、しんたろのこと、きらいになったの?」
「は? 何言ってんだよ。そんなワケねーだろ」

 荷物を下ろしたいけど真太郎が邪魔でとりあえずそのままリビングに入ってソファに座る。
 真太郎はしがみ付く力を更にこめてきて、オレから離れようとしない。
 体重はまだ二十キロくらいしかなさそうで、小さいから重くはないんだけどさ、こんな風にしがみ付いてくるのなんて珍しいって言うか、初めてじゃねーの?

「真太郎、ほら、顔見せろって」
「やら」

 スンと鼻をすする音が聞こえる。あれ? 泣いてんのか?
 って、オレ、なんかコイツ泣かせるようなことしたっけ?
 内心焦ってはみたものの、とりあえず落ち着かせるように真太郎の小さな背中を抱きしめてやる。

「何がどうなってオレがオマエのことキライになったって思ったんだよ? ほら、怒らないから話してよ」

 エアコンつけないとちょっと暑いかなと思えるくらい密着してて、子供の体温が熱い。片手で背中をポンポンと軽く叩いて宥めつつ、エアコンのリモコンを手にとってスイッチを入れる。
 優しく真太郎の耳元に語り掛ければ、真太郎はオレにしがみ付いたまま、ようやく口を開いた。

「和にい、いそがしいってしんたろとあそんでくれなくなった……。きょうもおれをむかえにきたとき、めんどうって顔してた。やっぱりしんたろのこときらいになったんだ……」
「は? ……」

 えーとつまり、高校入って全然会えなかったのを拗ねてるのと、オレがさっき面倒そうな顔してたから、自分は嫌われたと思い込んでるってことかよ?
 うわ、何だそれ、超可愛い。
 オレはこんなに真太郎のこと好きなのに。まあ、でも確かに、ここ最近全然遊んでやってねーもんな。
 けどそれは真太郎だって自分の生活っていうか遊び相手がいるからで、オレなんかと遊ぶよりも全然そっちの方が楽しいだろうと思ったからだ。

「いやいやいや、ちょっと待てよ。オレが忙しいのは確かにそうだけどな、真太郎だって毎日楽しく学校の友達と遊んでんだろ?」
「おれは、和にいがあそんでくれるっていったら、そっちをとるの」
「おい、そりゃ遊ぶ約束してる友達に失礼だろうが」
「さいしょからせいくんには言ってるもん。しんたろは和にいがだいすきだから和にいが遊ぼうって言ったらそっちにいくって。そしたら、せいくん、ぜんぜんあそんでもらえないねっていうから……ぐすっ」

 せいくんってのはいつも一緒に遊んでいる友達のことか?
 何よりも真太郎に友達ができたことを喜ぶべきなのに、それよりもオレを優先したいって言う真太郎にオレは喜んでいる。
 ギュッと首の後ろのシャツを掴まれて、肩口に熱を感じる。濡れた感じがするから多分真太郎の涙だろう。
 おそらくそのせいくんとやらに全然オレと遊んでもらえないねと指摘されたんだろう。オレが遊んでくれるとなればオレを優先するって言われりゃ、誰だって面白くねーだろうし。その割りに、半年も放置されてるワケだし。
 けどさ、だってよ、言い訳させてもらうけどな、オレだって毎日楽しそうに遊びに行く真太郎を見てりゃ声掛けづらいだろ。
 まさかオレを優先するなんてそんな真太郎の気持ちなんて知らねーんだから。
 とは言え、子供に、オレもまだ子供だけどさ、こんな小さな子にそういう事を言えるはずがない。

「あ、あー、ごめん、ごめんな、真太郎。オレ優先するって、オマエがそんな風に思ってたなんて知らなかったからさ、ほら、顔見せろ」

 身体を引き剥がすように真太郎の脇を掴んで引けば、渋々としがみ付いていた腕を離して、オレの膝に座る。
 真太郎はやっぱり泣いてて大きなエメラルド色の瞳が潤んでいる。目元が真っ赤だった。それに形のいい可愛い鼻から鼻水出てんぞ、ちょ、可愛い、マジ可愛い。
 小さな手でごしごしと目元を擦るのをやめさせて、乾くことを知らないかのように零れ落ちる涙を思わず唇で吸い取った。
 思わず体が動いてそうしてしまって、やっちまったあああああ! と思ったが、きょとんとした顔で真太郎がオレを見上げてくる。

「和にい……おれ、おれのこと、しんたろのこと、きらいじゃない?」
「ばーか、キライになんてなるわけねーだろ」

 オレの天使は澱みないまっすぐな瞳を返してくる。
 苦笑しつつそう言ってやれば、真太郎はほんの少しだけ嬉しそうに笑った。

「ほんと?」
「ホントだって。ほら、愛情のしるし」

 真太郎のそんな微かな笑顔が眩しくて、オレは真太郎の頬にチュとキスをする。
 柔らかな頬はその弾力を返してくる。
 くすぐったそうに首をすくめた真太郎の反対側の頬にもキスをする。

「きゃっ」

 耐え切れなくなった真太郎が可愛い声で笑い始めた。泣くよりもやっぱり笑った方が可愛いな、真太郎は。

「ご機嫌、治ったか? 真太郎」
「あのね、あのね、パパとママは好きってするときお口をくっつけてたよ」
「え? ……」

 真太郎が小さな手をオレの両頬に触れてきて、顔と近づけて口をくっつけてくる。
 ちょ、ちょっと、まってー! 何でオレ、真太郎に唇奪われてんだよおおお!!!!
 思わず硬直してしまう。意味分かってやってねーだろ、コイツ。何なんだよ、この天使は!
 そもそも真太郎のパパとママはなんでそういうところを見られてるんですかああああ!!!

「しんたろ、和にいのこと、だいすき……だめ? ……だった?」

 真太郎が少し不安そうにオレの顔色を伺ってくる。
 あー、いかんいかん、こんな状況で、ダメなんて言える訳がねーだろおおおおおがあああああ!!!
 
「だ、ダメじゃねーよ? お、オレだって真太郎のこと大好きだし?」

 ヤバイ、口の中カラカラだ。
 何子供相手に緊張してんだよ、オレ。
 オレの言葉にぱぁっと目を輝かせる真太郎は、物凄く期待に満ちた眼差しで見つめてくる。エメラルド色の瞳が本当に零れ落ちそうだ。
 こ、これは、もしかしてもしかしなくても、オレも真太郎と同じことをやれって言う期待なんだよな。もしやらなかったら真太郎がまた泣きそうだし、オレ絶体絶命の大ピンチじゃねーの? いや、本当の事を言えば真太郎の唇を奪えるなんて、まさかこんな小さな子供の唇を奪えるなんて幸せなんだけどさ。
 ええい、本当に真太郎に好きな子ができたときにキスのカウントは開始してくれ!
 オレは、真太郎の小さな唇に自分の唇を押し当てた。
 むにっとした感触で、どこもかしこも真太郎、柔らかいよなぁ。
 そっと目を開けると、目の前に大きなエメラルドの瞳がオレをジッと見つめていて、心臓がドキリと鼓動を叩く。

「真太郎、キスするときは目は瞑るんだぜ」

 そう、真太郎に教えて、オレの手で真太郎の目を隠す。掌に無駄に長い真太郎の睫毛の感触。この子供は本当に美人で可愛い。
 もう少し大きくなって、多分今のオレと同じくらいの思春期を迎えた頃、どうなっているのか、それをずっと見守っていたい。
 そんなことを考えつつ、キスをもう一度仕掛ける。
 ただ押し付けあうだけのキス。
 柔らかな唇を触れ合わせるだけの神聖なる愛の告白。
 チュと音を立ててやれば、目を隠していたオレの手をパッと外させて、大きな瞳で見返してくる。

「それ、どーやるの?」

 確かに押し付けるだけじゃ、音は出ない。
 子供は何処までも純粋な好奇心の塊なのだ。
 まあ、これくらい教えても構わないよな。
 オレは、自分の唇を尖らせて見せる。

「こうやって、軽く吸う。ほら、こういう感じ」

 チュッと言う音を立ててやると、真太郎も真似するが、中々上手く行かない。
 こうなってくると真太郎は生れもっての頑固さというか、上手く行くまでただひたすら必死にできるまで、ムキになってやる。
 何度かやってもダメで、タコみたいな顔のまま、膨れるから、オレはもう一度真太郎の唇にチュと音を立ててキスしてやった。

「ちょっと真太郎には難しいか、まあ、そのうちできるようになるよ」
「やだ、いま、やりたい」
「できてねーじゃん」
「むううううう」
「それより、腹減っただろ? ご飯食おうか?」
「……うん」

 時計を見れば、すでに十九時を過ぎてしまっている。普段十八時にはご飯を食べる真太郎でも流石にこんな時間まで放っておくのはよくない。
 もしこのまま、こう変な雰囲気に流されてしまったらオレもちょっと理性を保てるかどうか、分かんねーし、ちょうどいい話題逸らしがあったと、真太郎の頭を撫でた。柔らかいサラサラの髪だ。
 真太郎は何処もかしこも本当に柔らかい。
 ようやく膝の上から真太郎を下ろして、オレは立ち上がって荷物を床に置く。
 晩飯はうちの母親が作ってくれていたものが冷蔵庫に入っててそれをレンジで温めるだけでいいことになっている。
 オレはそこそこ食べるけど真太郎はそんなに食べないしで、二人で美味しく晩飯を頂いた。
 飯を食った後は、しばらく腹がこなれるまでリビングのソファに座ってテレビをつける。
 真太郎はくだらないバラエティ番組よりも何よりも、ペットとか動物関連の番組の方が興味を持っているから、いつも見てる番組はあるかと聞いたらこの時間はないといわれて適当につけたチャンネルに動物が出てたからそのままにしておいた。
 テレビを見てると、隣に座らせたはずの真太郎が、いつのまにかオレの膝の上に乗って来て、オレに抱っこされるようにしてテレビを見始める。

「どーした? 真太郎」
「ここがいいの」
「そっか、オマエ甘えっこだよな〜」
「……」

 ポンポンと頭を撫でてやると少し不満そうにその頭を下げる。
 あれ? 機嫌悪くなった? 最近の小さい子供は何をしてやればいいのか、ホントわからねー。何が地雷なんだよ。

「テレビ、終わったら、一緒に風呂入ろうぜ、真太郎」

 仕方ないから機嫌直せよと、ズシッと真太郎に伸し掛かって、ギュウッと抱きしめてやってから、風呂に誘う。
 子供は風呂が大好きだ。オレ達だって何度も一緒に入ってる。
 まあ、半年ぶりっていうか、中学上がってから、オレも色々身体に変化出てきてからさ、ちょっと恥ずかしくなって風呂に一緒に入るのやめたんだけど、まあ、今日くらいはいいだろう。

「ホント?」
「てか、オマエ、一人で風呂入れないだろ?」
「は、はいるもん」
「いーからいーから、今日はオレが頭と身体洗ってやるよ」

 ちょっとからかってやれば、すぐに頬を膨らませる。
 けどからかわれたことをこの子供はとても聡いからすぐに分かるんだ。
 真太郎、本当に将来が恐ろしい子だよな。
 風呂の約束を取り付けると、とたんに不機嫌だった気分がご機嫌になったらしく、テレビを見ながらも足をぶらぶらさせたり、オレの手で遊んだりと真太郎はオレと一緒に入る風呂を楽しみにしているようだった。
 すぐに風呂に入らなかったのは、ちゃんと消化する時間をとったからだ。
 オレはいいけど、真太郎が腹を壊しても困る。
 二時間スペシャル番組だったから、二十一時近くまでそれは続いた。

「よっし、風呂入るか!」
「うん!」

 オレの膝の上から真太郎が飛び降りて、タタタッと風呂に駆け出そうとする。オレはそれをあわてて呼び止めた。

「待て、オマエ着替え持ってきてんだろ。持って行かなきゃダメだろうが」
「あ、はぁい」

 何事も自分でできることは自分ですること。
 これがオレ達の決め事だ。昔からそう。
 すぐに戻ってきた真太郎が、自分の荷物から、着替えを取り出す。尤も覗いてみたけど、中には明日の着替えと寝巻きくらいしか入ってない。

「そーいや真太郎、宿題は?」
「和にいが帰ってくるまでに終わった」
「あ、そっか、そっか、さすがだな、真太郎は」

 グリグリと頭を撫でてやる。
 オレが帰ってくるまでにキチンと宿題を終わらせているなんて、何て殊勝ないい子なんだろう。
 まあ、多分、宿題を残していれば、オレと一緒に遊ぶ時間がなくなってしまうとでも考えたんだろう。
 そういうところも本当に聡い賢い子供だ。勉強も出来る聡明で美人な子供は、寝巻きのパールグリーンのTシャツと短パンを取り出して、オレの顔を見てニコリと笑った。
 うわ、かーわいい。
 もうさ、何度見ても可愛くて仕方がないよな。

「洗濯物は洗濯機だぞ」
「うん」

 脱衣所に移動して、自分で脱ぎ始める真太郎の横目にオレも服を脱ぎ捨てる。
 本当なら暑いしシャワーだけでいいんだが、まあ、真太郎も遊びたいだろうから、シャワー浴びながらゆっくり温めのお湯を張ればいい。
 全部恥ずかしがることなく服を脱ぎ捨てた真太郎はそのまま先に風呂場へと入っていく。ようやく取っ手に手が届くくらいだ。
 可愛い。
 このくらいの年の子供なら、日焼けの後とか真っ黒になっているはずなのに、真太郎は相変わらず透き通るような白さのままの肌の色をしている。
 幼い子供独特のふくふくとした肉付きが、今度は縦に伸びる準備をしているのか、大分骨ばっているように見える。
 オレも全裸になってから風呂場へと入った。
 扉を閉めればそこは密室になる。
 小さな真太郎が、勝手知ったる風呂場と言わんばかりに、シャワーのコックを勝手に捻ってオレに向けてきた。

「わっ、コラ、真太郎!」
「きゃはははは!」

 コックを捻ればそのうち湯が出てくるにしても、最初は水だ。冷たい水をかけられて、オレが怯んだ瞬間を見て真太郎が笑う。
 あ、クッソ、狙ってやがったな、この野郎。
 とは思うものの、真太郎に対して怒りがわくとかそんな狭量の器ではない。
 すぐにシャワーを取り上げて、湯が出てることを確認してから、真太郎の頭からかけてやる。

「ほら、頭、洗ってやるから目、瞑れ」
「はぁい」

 シャワーとは別の口から、湯桶に湯張りをはじめつつ、オレは真太郎の髪を洗い、体も洗ってやった。
 
「オマエ、日焼けしねーのな?」
「焼けるとあかくなるから、クリームぬってる」
「あ、なるほど、にしても白すぎだろ」
「和にいは白いのだめ?」
「いや、そうじゃなくて。真太郎にはすっげー合ってると思ってる」
「ならいい」

 膝を床について体を洗ってやってると、真太郎は何を思ったのかジッとオレの股間を見つめてきた。
 ヤダ、恥ずかしいからそんなにジッと見つめないで。

「和にい、しんたろのとちがうね?」
「へっ? な、何のこと?」
「おちんちん」

 直球きたぁあぁぁぁぁぁ!
 タオルで巻くのもどうかと思って、隠さずにいたけど、うん、やっぱり指摘しちゃうのか。
 子供は好奇心の塊。同じ雄同士、本来ならば同じ形をしているものが、まあ、早々にいつでも性行為できるようになってしまったオレの身体についてるものと自分のものとの形が違えば、そこに興味を示すのは仕方ないだろう。
 ついでに言えば、オレだって真太郎のよりはでかかったけど、昔一緒に風呂に入ってた頃はこんな形じゃなかったワケよ。
 サッと手を伸ばしてしゃがみこんだ真太郎はマジマジとオレの股間を見つめる。

「うわ、ちょっと、コラ、真太郎!」

 真太郎の手が届く前にサッとかわして、オレは自分の股間をスポンジで隠した。

「なんでかくすの?」

 不満そうな顔でジッとオレを見つめてくる。
 何でって、こんなもん見せちゃダメでしょ、やっぱりさぁ。

「いや、ほら、こういうのはまだオマエには早いってか」
「はやいの?」
「そう、早い、早すぎるし、そのうちオマエのちんちんもこんな風になるって」

 泡だらけの真太郎が、形のいい眉根を顰めてオレを見つめてくる。
 
「そのうち、なるの?」
「そうそう、もっとオマエの身長が伸びて、オレくらいになったら同じになってるって」
「なら今、それ見たい」
「み、見たいって……」
「ダメ?」
「ま、まあ、別に見られても減るもんじゃねーけど……。と、とりあえずまず綺麗にその泡流してからな」

 何で見たがるんだよおおお!! この好奇心の塊めえええええ!
 意外とちょっとした興奮とかでオレのコレはすぐに反応してしまう。今の真太郎の視線にだって反応を仕掛けてる。
 やべーって、マジで。
 まあ、ある意味現実を見せるってことで見せても構わないけど、それでもオレの天使が穢れてしまうじゃないかああ!
 ん? あれ? まあ、確かにそのうち、いくら天使だからって学校とか色んなところで、性的なことって知ってしまうわけだよな。
 どんなに頑張ったところで温室で育てて誰にも触れさせないってワケには行かないんだったら、オレが色々真太郎のはじめてを教えてやってもいいんだよな?
 むしろ、他の誰かに教えられるくらいなら、オレが教えたい。
 こう、ムクムクと変な執着心っての? 嫉妬心みたいなのがオレの心の中に渦巻き始めて、良心とソレが軽く合戦を始める。
 いやいやいやいや、もっと健全に教えようって。
 てか、見せるだけなら健全だろ。何の問題があるんだよ。確かに真太郎は真太郎のパパが家にいる事が少ないから一緒に風呂に入らないらしいし、身近な男の家族って言えばオレくらいなもんだ。厳密には家族じゃねーけど。
 だったら、教えてやるのもちょっと早い気はするが、いい機会なのかもしれない。
 そんなことを悶々と考えながら真太郎の身体についている泡を綺麗にシャワーで落としていく。
 骨ばってきている身体はいつか筋肉が付いてもっと大きくなるのだろう。
 それでもきっと華奢なんだろうと思う。真太郎のパパだってそんなにごつい方ではない、少し身長が高くてスラッとしてるから真太郎もそんな感じになるんじゃないかと思う。
 薄く色づいている乳首はとても小さくて、何の機能もないってのに、きっとここも成長していくのだ。
 やべえ。やっぱり好き。可愛い、真太郎。

「ほら、好きに見ていいぞ」

 約束通り、真太郎の身体に付いた泡を洗い流してやってから、オレはバスタブに座って足を開いてやった。
 何ていうか好きな子供の前で自分の全裸をさらけ出すとか、何のプレイだよ。しかもその子供はオレのちんこに興味津々ときたもんだ。
 こんなタイミングで微妙に興奮してきて、ゆるく勃起してしまう。
 ああ、そのうち、真太郎が本当の意味を知ればオレのこと変態だって思うのかな。今のコレ、思い出してさ。
 そんなことを考えれば余計に悪循環で、じわりじわりとオレのペニスが勃ち上がって行く。

「さっきとまた形がちがう!」

 ぺたりと触られる。すっげー快感が腰に来るんだけど。ちょっと、真太郎、やめて触んないで。

「はは、勃起してるからな」
「しんたろのはこうならない」
「うーん、オマエも興奮すれば勃起くらいはするんじゃねーか?」

 子供の頃、ちょっとエッチな漫画とか見てちんこぎんぎんになったこととかある。
 精通してなかったからはけ口わかんなくてしばらく股間押さえてたっけなぁ。
 けど小学一年生の頃はどうだったかなんて実際オレでもおぼえてないし、真太郎自身のペニスが勃起するのかどうかはさすがにわからない。
 試しにやってみてもいいかもな。
 そう考えて、オレは真太郎の身体をひょいと抱え上げた。
 で、勃起してるオレのちんこに真太郎のソレが当たるように真太郎をオレの身体に跨らせる。

「真太郎のちんちん小さいなぁ」
「からだのおおきさがちがうもん」
「うん、可愛いってこと」

 真太郎の洗ったばかりの髪に鼻先を埋めてスンと匂いをかぐ。
 小さな頭はシャンプーの匂いだ。
 
「これ、こうするんだよ」

 真太郎の小さなちんこを手にとって、オレはソレをギュッとつまみ上げる。

「ひっ、か、和にい、いたい」
「ここ、皮があるだろ? これ、動くんだよ、こうして」

 皮だけを動かせるように何度か扱いてやれば、ゆるゆると真太郎の腰が揺れる。

「あ、あ、あ、」
「思いっきり捲る」
「ああああん」

 手前に引くようにして、真太郎の先端を露出させる。
 包皮をむいてしまえば、そこはまだ誰も触れた事のない、真太郎ですら触れた事のない場所だ。とても敏感で、気持ちがいい。
 良かったな真太郎、これでオマエは包茎にはならない。こういうのって勢いがねーとダメなんだよ。
 真っ赤に熟れたそこに指先を当て、ああ、舐めたいなと考える。
 そんなことを考えてる時点でオレは立派な変態だ。こんな小さな子供のちんこ舐めてどうするんだ。ただただ興奮するだけだ。食べてしまってもいいかもしれない。なくなったら性行為できなくなっちまうだろうから、そんなことはしないけど。

「か、かずにい、だめ、こわい」
「痛くねーだろ? これが気持ちがいいってことだ」
「かずにいもきもちいいの?」
「そうだぜ。オマエのこれと一緒で触るとすっげー気持ちいい」
「ん……」

 真太郎が両手を伸ばしてきてオレのペニスに触れる。跨ってるようなもんだから届かないわけじゃない。
 小さな手がオレと同じような動きで先端に触れてくる。拙い動きは、自分でやるより全然もどかしいけど、真太郎が触っているってだけで、何だか昇天できそうだ。

「ふ、あ……」
「ん、くっ」

 グリッと更に真太郎の小さなペニスに刺激を与えてやれば、同じようにオレの先端に指先で刺激を与えられる。
 まあ、我慢するのも意味がないと、オレはそこで一気に射精した。
 真太郎は流石に出なかったが、オレの射精を見てたようで白いのがでた! と目を丸くしたのだ。











 最悪の夢を見た。
 原因は、間違いなく、昨日見たアレ。
 真ちゃんの、幼少時代の写真だ。
 天使みたいなもうホントすっげー可愛い子供だった。
 オレは無理を言って一枚その写真を貰って帰ったのだ。
 こんな可愛い子が近所にいればなんて妄想しながら寝たのが悪い。

「あー、真ちゃん、ごめん」

 目覚めた瞬間の居心地の悪さっていうか、何ていうか、うん、あの百九十五センチの緑間真太郎をあんなショタっ子に変えちまう自分の脳内が恐ろしい。
 否、違うな。
 オレは、真ちゃんの全ての時間が欲しいのだ。
 生れた時から大きくなるまで全部。
 いい加減自分がどれほど緑間に入れ込んでいるかを自覚した方がいい。

 あー、クソ。もう一回寝るか。



END






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