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「…………」

2Bの教室に戻ったものの、教室に鳴上くんの姿はなかった。
凛月の姿もなく、衣更くんの姿も見えない。他に瀬名先輩につながりそうな人をわたしは知らない。というかわたしが交流できる人は限られている。

どうしよう。この書類は午後までに渡さなくてはいけないし、放課後では遅すぎる。受け取ってしまったわたしが悪いのだから、責任を持って届けないと椚先生にも瀬名先輩にも迷惑がかかるだろう。

でも、瀬名先輩の居場所がわからない。
スタジオにいるだろうか。あそこならば慣れてきたので比較的楽に足を運べる。


一縷の望みをかけてスタジオに行くと、人はいたものの、そこにいたのはわたしが知っている人たちではなかった。そもそもここはKnightsの人たちが勝手に根城のようにしているだけで、ユニット専用の部屋ではないから当然のことだ。


3年生の教室には……行く自信がない。同学年の教室にだって慣れるまでに相当時間がかかったし、自分から行くなんて尚更無理だ。
こうやって考えている間にも刻一刻と時間は進んでいるし、だんだん気が重くなってくる。


書類を渡すだけ。たったそれだけ。
教室の前まで行けばタイミングよく瀬名先輩が出てくるかもしれないし、向かう途中でだれかに会えるかもしれない。

とにかく今は動かなきゃ。
上級生とはいえ一つ歳が違うだけだし……怖くない。男子だけど。男の子がみんな悪い人じゃないってことはわかってる。小学生のときのことは全部わたしが悪かった。だから大丈夫。今ならできる。がんばる。わたし、がんばる。がんばって。

過去はもう変えられない。あのときこうしていたらなんて思っても現状に変化はない。
だってわたしはいつも逃げてきたから。逃げることは簡単で、だれにだってできること。

いうことを聞かない足を無理やり前に踏み出して、わたしは瀬名先輩を探す旅にでかけた。