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ま〜くんの隣を俺が歩く。
そんな俺の一歩右後ろを名前が歩く。
なんともいえない微妙な距離感。

「…………」

当然だけど名前は喋らない。俺とま〜くんの会話に入ってくる気もないらしい。
名前は自分から喋りだすような子じゃないし、俺が無理やり引っ張ってきたようなもんだから仕方ないけど。ま〜くんがいるから手を繋いであげることもできないし。

でも、人見知りで口数が少なくて臆病な名前が、俺に助けを求めてくれた。だれよりも真っ先に俺のところに来てくれた。ただのクラスメイトとか隣の席の同級生とか、名前の中で俺がどんな位置付けにいるのかはわからないけど。困った時に頼りにしてくれたのが俺なんだ。今はそれだけで十分満足なの。俺が名前の中で一番近い場所にいるならそれで。

「……あれ、名前……?」

かと思ったら少し目を離した隙に名前の姿がなくなっていた。物理的な距離で遠くに行かれたら困るんだけど。ま〜くんも気づいてないし。

「ま〜くん、名前がいない」
「え?さっきまで一緒だっただろ」

二人で元来た道を振り返ると、道の端っこに名前の鞄が転がっている。なぜあんなとこに。
……まさかだれかに誘拐されたんじゃ。

「名前!」

思わず慌ててその場所まで駆け寄ると、俺の呼び声に反応した名前が物陰からびくっと顔を上げた。
しゃがんだまま驚いた顔で俺を見上げている。
よかった、いた。
……じゃなくて。

「なにしてんの」

取り乱してしまったのが恥ずかしくなって少し声のトーンが下がる。
無事だったらいいんだけど。自分の必死さに自分で驚いた。

「……猫が……」

名前は消え入りそうなか細い声でぽつりと呟いた。視線を名前の足下にうつすと、みゃ〜と子猫が鳴く。
まさか猫に気をとられて座り込んでたの?

「急に消えたら吃驚するじゃん」
「ごめんなさい」

怒るつもりはないのに、ちょっと怒気を含ませてしまった。名前もしゅんとしてる。そういう顔をさせたいわけじゃないのに。いつもうまくいかない。

「そうだな。一言いってくれたら俺たちも付き合うしさ」

後から追いついたま〜くんも俺に並ぶ。名前はおとなしい癖に、目に映るいろんなものに興味が湧いちゃうんだよね。いつだったか家出した名前を家まで送ったときも、ふらふら寄り道しそうになって手を繋いであげたんだっけ。そういうところはちょっと王さまに似てるかも。

ま〜くんの言葉に無言で頷いた名前は、地面に置いてあった鞄を肩にかけて立ち上がった。最後にこっそり猫に手を振っている姿がちょっと可愛くて、じっと見つめてしまったのは内緒。ばいばい、にゃんこ。可愛い顔したってあんたに名前は渡さないからねぇ。

「よし、行くか……名字さんは猫が好きなのか?」
「はい」

気が付いたら名前の隣にま〜くんがいた。
ちょっと、そこは俺の場所なんだけど。ま〜くんまで名前を横取りする気?

「どーん」
「うわっ、なんだよ凛月。危ないだろ〜?」

ふざけたフリしてま〜くんに後ろから飛びつく。
俺って結構嫉妬深いんだから、気を付けてよね、ま〜くんも名前も。

「名前は猫とお話ができるんだよね〜?」
「できない」

真顔で即答する名前に、俺とま〜くんが同時に笑った。
こういう賑やかな時間も楽しいでしょ?名前?