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「現行犯逮捕ってことやね」

いつの間にか仲間に加わった影片くんの口から聞きなれない単語が飛び出す。影片くんの隣には鳴上くんの姿もあった。凛月と衣更くんによって集められたメンバーだ。

「そうそう、みかりん。よくわかってるじゃん。やっぱり証拠がないと逃げられて終わりだからねぇ」

相手の狙いが何かわからない以上、計画性もなく近づくと逆にわたしたちが利用されるかもしれない。

「でも現行犯ってことは、名前ちゃんが」

鳴上くんの一言で集まる視線。固まるわたし。
上から降り注ぐ視線に、耐えきれなくなって俯いた。

「名前ちゃんを囮にするってことよね」

鳴上くんは躊躇して一度飲み込んだ言葉をはっきりと口にした。言葉にしないとそのまま有耶無耶になりそうな空気だった。
おとり。
わたしで敵をおびき出す作戦ということだ。まあ、妥当だろう。

「名前を危険な目に遭わせるわけにはいかない。条件が合うまでは実行しないから。みんな慎重に動いて」

急にキリッと張り詰めた表情を見せた凛月が指揮をとる。
彼はわたしを囮にする気がないようだった。わたしで役に立てるなら、囮だろうと餌にだろうとなって構わない。多少危険を犯さないと得られない自由だってある。

「名前?」

わたしだけ腑に落ちていないのが伝わったのか、凛月に呼び掛けられた。確認だ。何か意見がある?と聞かれたのと同じことだった。
凛月は意外と人のことをよく見てるから、わたしの心理も読まれていそう。

「凛月、ありがとう」

だから飲み込んでおいた。人が犠牲になることを、凛月はきっとよく思わないだろう。自分のことしか考えていないって怒られてしまう。だから余計なことは言わない。

もしものとき、彼らに不利な状況に追い込まれてしまっても、わたしがすべて責任をとればいいだけだ。