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朝が来ても頭が痛くてなかなか起き上がることができなかった。ベッドに横になったまま毎日着ている制服をじっと見つめる。わたしには似合わないと思っていたのに、いつの間にかその服はわたしの体にぴったり合うようになっていた。

なんとなくだけど馴染めていると勝手に思っていた。
嫌われるようなことは……思い返せばたくさんの人に迷惑をかけた気もするけど。
男の子の気持ちはよくわからない。

重い体を無理やり起こして制服に着替えたころには、もう一限目の授業が始まっている時間だった。
遅れついでにゆっくり準備をする。お母さんが用意してくれた朝ごはんをもそもそ食べて、お兄ちゃんが話しかけてくる言葉に適当に相槌を打つ。お父さんはまだ寝ている。いつもの何気ない朝。

やっぱり家にいるほうがいいのかもしれない。

と思う心を落ち着かせて、家を出る。
学校に行かなきゃ。


遅れて登校するとクラスメイトから視線が飛んできた。そういえば最近はずっと朝から一日学校にいることが当たり前だったから、遅刻したのは久しぶりだ。

自分の席に向かうと、隣の席で寝ていた凛月が顔を上げた。わたしは出来る限り周りを見ないようにして席に座る。今日は一日静かに大人しく目立たないように過ごそう。そもそもそれが本来のわたしであって、誰かの機嫌を気にしてびくびくする必要なんてない。退学することがわたしの最終目標なんだから。


そう思っていたのに。
こういうときに限って事件は起こるのだ。


*

だれとも会話をすることなく一日が終わって、静かに席を立つ。凛月は既に教室にはいなくて、残っているのは数人のクラスメイトだけだった。長居する理由もないので、荷物をまとめて教室を出る。

――また明日な。

昨日、月永先輩はそう言っていたけど、今日もレッスンに付き合う気分ではない。
帰宅する前に椚先生にレポートの途中経過を報告しに行こう。


職員室で用事を済ませて廊下を歩いていると、後ろから手を引かれた。
突然のことに、声にできない悲鳴をあげる。心の中で。


「名字さん」


振り返って息が止まった。この人。
思い出したのは、どんどん消えていく私物と、追いかけられた記憶と、階段から落ちたときの……

あれ、なぜあのときのことを思い出したんだろう。
あのとき、凛月の背中を押したのは。


「や、やめて」


必死で彼の腕を振りほどく。この人、見た目以上に握力が強い。前にもこんなことがあったような。


「逃げないで。俺、名字さんの」


やだ……!
思い切り相手を突き飛ばす。自由になった腕をさすりながらその場から走って逃げた。

この人のすることはだいたい読めている。
どこか遠くに逃げて隠れないと。