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望んだら、望んだ分だけ与えられる。形あるものだけではなく、才能や人望もきっと生まれる前に与えられるものなんだろう。わたしは何を持って生まれてきたんだろう。


その日。職員室に寄ったあと、校内を散策しようと思って廊下を歩いていた時にその部屋の前で立ち止まった。そこは影片くんが部活動で使っている部屋だった。

ここへ来たのは追いかけられて逃げ込んだのが最初だ。

なんとなく部屋の扉に手をかけると、鍵が開いていた。だれかいる?
一瞬だけ躊躇したあと、そっと部屋の中を覗くと、中は薄暗くて人の気配はなかった。だれかいたのかもしれないけど、今は外に出かけているようだ。

いろいろなものが置いてある部屋の中が気になったものの、勝手に入るのはやめたほうがいいと思って扉を閉めようとしたときに、彼女と目が合う。


綺麗な翡翠色の瞳をしたお人形だった。


息を止めて部屋の中に入ると、ゆっくり静かに彼女のもとへ歩み寄った。
近くで見るととても繊細で美しいお人形だった。


「あなたの名前はなんていうの」


彼女の目線に合わせて座ると、おそるおそる話しかける。今ならだれもいない。


「あなたはどうしてここにいるの」


じっと見つめ合う。彼女に問いかけたはずなのに、その瞳に見つめられるとまるでわたしが質問されたような気分になった。どうしてここにいるの。なんのために。


「わたしはよくわからないの。ここに来たのはわたしの意志じゃなかったから」


きっかけはお父さんだった。
小学校で不登校になり、中学校も途中で行けなくなって、でも頑張って高校を受験して合格したのに、その高校でもうまくいかなかった。


「どこへ行っても同じだと思ってた。だってどこへ行ってもわたしには生きづらくて」


もうわたしには居場所なんてないと諦めたときに、お父さんが夢ノ咲学院を勧めてくれた。


――僕の通っていた学校なんだ。名前もきっと気にいるよ。


お兄ちゃんは反対したけど、わたしは最後の望みをかけて転校した。転校してすぐに不登校になってしまったんだけど。今のわたしが進もうとしている道は、結局今までと変わらない、学校から逃げるような選択だ。


「……学校を辞めようと思ってるんだけど、本当にそれが正しい道なのかわからない。ここにいたら何かが変わるという確証もないし、他に行くあてもないの」


だれかに必要とされたのはここが初めて。お兄ちゃんのことを根掘り葉掘り聞かれることもない。ゴリラなんて呼ばれるし、周りの人はみんな個性的でたまに強引な人もいるけど、この生活を素直に楽しいと思ってしまうわたしがいる。

男の子ばかりの学校だから、馴染めるはずがないと思っていた。でも、同じじゃないからこそ、うまくやっていける可能性もあるんじゃないのか。


「あなたはどうしたらいいと思う……?このまま辞めてしまってもいいのかな……ねぇ、今日は喋らないんだね」


黙っている彼女に向かって問いかけると、思いがけないところから声がかかった。


「入室を許可したつもりはないがね」


心臓が止まった。