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「ほんとに帰らないの?」


凛月が念を押すように問いかける。
帰る気はない。それだけの覚悟を持って飛び出して来た。ここで帰ったらお兄ちゃんは「ほら、やっぱり」って思うだろうし、わたしの気持ちはまた封印されてしまう。


「帰りたくない。凛月は帰るの」


時計を見たらもうすぐ日付が変わるころだった。凛月はこんな時間に学校にいても当たり前みたいな顔をしてるけど、よく学校で寝泊まりしてるのだろうか。


「帰れないでしょ。あんたを残して」


わたしのせいで帰れないということ?
ふと、凛月から借りた上着が目に入る。
これのせいだ。


「制服は明日返すよ」
「はあ……制服なんてどうでもいいけど」


凛月は本当に制服のことなんてどうでもいいみたいだった。深いため息がちくっと胸に刺さる。わたしが我儘言うから怒ったのかも。


「どうせ近所なんだし、朝になったら送ってあげる」


そう言って凛月は腕を伸ばして大きく欠伸をした。


「凛月と一緒にいたのがバレたら、お兄ちゃんが怒るから」


どうしてかわからないけど、お兄ちゃんは凛月のことを特に警戒してる。朔間朔間ってうるさいから、凛月だけのせいじゃないと思うけど。


「いいじゃん、怒らせとけば。名前のお兄ちゃんって面白いよね〜。テレビで見るのと全然違うんだけど」


何かを思い出したみたいにくすくす笑いだす。
楽しそうに笑ってるけど、そんな余裕どこから生まれてくるんだろう。


「笑い事じゃないよ。凛月、お兄ちゃんに殺されちゃう」
「大袈裟すぎ」


いや、すごく真面目な話なんだけど。