参拾弐



「鳥に息子の名前付けて身代わりにしてる時点で矛盾してんじゃねーか。
―――アンタはただ
息子の死に様に囚われてただけだ」


――違う!!
違う、私はッ…!!」


「……俺さ
昨日あんたに言われた事…
よく考えて
――もし…俺の
俺の大事な人が――死んで
その魂がどこに行くかなんて分かんねーけど
…でも……
どこに還っても、どんな形になっても
きっと ずっと
俺の中にいるよ」


「――悟空!!
大丈夫!?」


「ははッ…
ゴメンな惷香。
身体動かねー」


「やっぱり何か飲まされ…」














悟空に近寄り、様子を見ていると
淀仁の息子と同じ名の鳥
天羽が窓辺へと近寄った。














「…天羽……!?
どこへ行くんだい。
――待ってくれ
天羽……!!」















淀仁の声も聞かず
天羽は空高く舞い上がって

青空へと羽ばたいて行った――















「……悟空、帰ろう。」


「――うん。
でも俺…」


「ったく、手ェ掛かんだよ」













悟浄はヒョイっと悟空を背に乗せると、それ以上淀仁にする事なく家を後にした。



淀仁もきっと分かった筈。

あの鳥は息子の生まれ変わりでもなければ
人の倫理を侵す事は
もう理念でも使命でもないと言う事が――















「――ったく
バカ猿が。」


「……うん
バカでごめん」


「誰かが死ぬ事より
てめぇが生きる事のが大事だろーが」


「うん
…ホントごめん」


「いいんだよ悟空。
悟空は素直過ぎるから素直に悩んじゃっただけよ」


「おい。俺が素直じゃねーみてェじゃねぇか!」


「ん?そう聞こえたかな?」


「っまぁ…バカのくせにややこしい事考えんなっつの。
生きてりゃ帰る場所なんざ
そこにあんだろバーカ」














岩場の下にはジープに乗った三蔵と八戒がいた。














「…泣いてんなよバカ猿ー」


「〜〜バカバカうっせーよ、このエロバカッパ!!」


「おめーさっき自分でバカ認めたじゃねぇかよ!?」


「ホラ
早く乗った乗った。
置いてかれるよ?」


「ったく……」







.

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