弐拾八




家主の娘に当たる女性も三蔵一行の身の回りの世話をする為に来ていた。

そんな中、悟浄の後ろに落ちていた物に気が付いたおばさんが悟浄へと手渡す。














「―――あら
落とし物ですよ」


「お?
ああそうか。忘れてたぜ」


「どうしたんですか
手袋なんて」


「時期にしちゃちょっと早いわね」


「昨日丘の上で拾ったんだよ。
この村のガキが落としでもしたのかなと思って」














前日の夕方に淀仁の家に行った時に拾った子供サイズの手袋。

それは手編みのようで、あれほど鳥がいても無事だったのか綺麗な物だった。
















「あの……
ちょっとそれ、見せて頂けます?」















遠慮がちに言って来たのは
家主の娘さんに当たる女性。

不安そうに悟浄から手袋を受け取ると、隅々まで見ている。















「やっぱり…
間違いないわ。
これは私が編んだ息子のお気に入りだった手袋です!」


「失礼ですが――息子さんは」


「流行り病で半年前に。
……まだ六歳でした。
でもなんで丘の上なんかに…
この手袋、息子と一緒に埋葬した筈なんですよ?」
















その言葉に惷香と三蔵はピクリ…と反応を示す。

直ぐ様、三蔵はガタリ…と立ち上がり埋葬場所をおばさんに尋ねた。















「――この村は鳥葬を廃止以降
遺体を土葬しているのか。
埋葬場は?」


「ええ、村外れに墓地を設けて」


「案内しろ。
今すぐにだ」


「えッ?!」


「悟浄は念のため、丘に向かって下さい」


「私も丘の上に行くから。
八戒は三蔵とお願いね」


「分かりました」


「オイオイ
なんだってんだよ?」


「それからスコップと男手を用意しろ」


「――いいんですか
三蔵」


「思い過ごしだったら経でも上げりゃいい」







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