壱
――その者異端につき
彼女の名前は惷香。
異世界からの訪問者である。
彼女は元は同じ世界に産まれる筈だった…
だが”何者かの邪魔”により、阻止され、違う世界で産まれたのだが
何の因果かこの世界へと引きずり込まれた。
否、呼ばれたと言うべきなのだろう。
そして西へと旅を開始した三蔵、悟空、悟浄と出会い一緒に西へと旅をする事となったのだった。
ただ1つ
三蔵からの溢れる程の愛情を受けながらのこの旅は
惷香にとってこの世界に呼ばれた理由の1つなのである。
…
……
………
元は白いローブであったのだろう。
あちこち破れ、裾はボロボロ
汚れているせいで白が血痕と茶色に変色を遂げたそのローブを首までスッポリと身体を包み込む5人が、岩場だらけの道とも言えない道を進んでいた。
会話らしい会話はない。
黙々と進むその姿は異様で、誰も近寄ろうとも思えない程のオーラを放っていたのだ。
そんな岩場だらけの道を1台の馬車が勢い良く走っていた。
息を荒げながら、馬車に乗る2人の男は後ろをたまに見ながら走り続けている。
「はぁッ はあ」
「はァ は…!?」
道を塞ぐように現れた数人の妖怪。
手には棍や刀などの武器を持つ
「!!
うわッ……!!」
「後ろからもだ
突破しろ!!」
背後を見れば、背後からも数人の妖怪が道を塞ぐ。
だが、2人の思いは直ぐに打ち砕かれるかのように、妖怪の放った弓矢がロバに当たり
ロバは悲鳴を上げながら倒れる。
ロバと共に倒れる馬車から2人の男は地面へと投げ出された。
「いッ……!!」
「…こっそり跡つけて村のありかを探ろうと思ってたのによォ
最近の人間どもは警戒心が強くていけねぇ」
「……ッ!!」
2人の男は冷や汗を流しながら妖怪達を睨みつける
そんな目にイラッとしたのか、妖怪は男を蹴り上げた。
「〜〜何だァその目は!!」
「人間ごときが生意気なんだよ!!あぁ!?」
倒れた男に向かい、数人の妖怪は囲むように何度も蹴り続けた
その男を見ていたもう1人の男は、怯えながら小さな悲鳴を上げた。
「―――ヒッ…」
「お前はあんな目には遭いたくねェよなァ?
取り引きと行こうじゃねえか
村まで案内してくれりゃ、お前の命は助けて…」
「――無駄だ!!」
ボロボロに蹴られた男が一蹴した隙を見て、取り引きを持ちかけられた男は悲鳴を上げてその場から逃げようとした。
「うわァ ああ ぁあ!!」
「――そォか
じゃあ今日の獲物は」
妖怪はスッ…と弓矢を走る男の背中へと向けた。
妖怪の目には弓矢から真っ直ぐ狙う、走る男の背中…
「てめェらだ」
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