貴方色・九
「おい宿屋に戻るぞ」
「え?だってまだ飯…」
「宿屋で食えばいいだろうが!」
「何で怒ってんだよー!」
「怒ってねぇよ!」
「怒ってんじゃん!」
「うるせェ!ぶっ殺すぞ!」
そのやり取りを見て困惑する惷香に対し
悟った悟浄と八戒はヤレヤレと苦笑いを洩らした
宿屋に戻り八戒、悟空に悟浄は夕飯の材料を買いに出掛けた
その間
三蔵は部屋で新聞を広げお茶を啜る
惷香は洗濯物を畳みながら3人の帰りを待っていた
そんな惷香の後ろから
突然三蔵の手が首元と腹部に手を回って抱き締められた
「さ、三蔵?」
急に抱きつかれ
洗濯物がバサリと落ちる
「どうしたの?」
無言のまま後ろから抱きつかれ惷香は困惑しながらも頬は紅潮し
心臓は激しく動く
「こんな姿を他の男に見せんじゃねぇ…」
「え…?」
「俺以外魅了すんな アホ」
「そんな事…」
三蔵はそのまま惷香の顔を振り向かせ
惷香の唇に覆う様に三蔵の唇で塞いだ
「いつもの服が直ったら
この着物は俺の前だけで着るんだな
他のヤツの前で着るのは許さん」
「三…蔵…?」
赤面する惷香の顔を見つめて三蔵は呟いた
お前が魅了するのは俺だけなんだよ…再び深い口付けに惷香は三蔵に更に溺れる
口付けの度 貴方色に染まる…貴方色・fin
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