四拾八


次の日の朝


惷香はあの夢も見る事もなく目が覚めた


そのお陰か目覚めはとてもスッキリしていた


身形を整え荷物を纏めると1階のロビーに向かった


ロビーのソファには三蔵が新聞を広げコーヒーを飲んでいる







「おはようございます」








三蔵に声を掛ける









「ああ」









三蔵はチラッと見てすぐ新聞に視線を落とした

惷香は周りをキョロキョロ見回すと 他の3人の姿はない







「あいつらなら買い物だ」








三蔵は新聞をバサリと捲りながらコーヒーを口に運ぶ








「お前も飲むなら注文して来い」


「あ、いいえ
買い物は食材とかですか?」


「まぁな
次の町まで4日は掛かるそうだ」


「4日も…」


「お前は旅は初めてか?」








三蔵は新聞を折り畳みソファにバサッと置くと
袖から煙草を取り出し火を付ける
惷香は荷物を下ろし三蔵の向かいに座った








「はい
ずっと自分の産まれた村で育ちましたから」


「1つだけ言う
俺達には危険が伴う
俺もあいつらもお前の子守りはごめんだ」


「分かって…います」








本で見たのを思い出せば三蔵一行には妖怪達が襲いかかって来る
当然
惷香も【三蔵一行】となる以上
襲われる事も命を狙われる事もある


しかし突然身を守る方法なんて
分からないし出来ないのが事実








「前三仏神の言っていた【特別な力】
は感じた事はないのか?」


「ないです…が、あのッ……」








夢の話をしようとした時
旅館のドアが勢い良く開いた








「買い物終わったよー三蔵!」


「さっきのオネーチャン俺見てたのによ
コブ付きじゃな〜」


「悟浄
そんな暇はありませんよ?」








3人が買い物から戻って来た








「三蔵
食材とかもうジープに積んだからさ
いつでも出発出来るよ!
あ、これ運ぶな」









惷香の荷物を悟空が軽々と持つと
ジープへと運んでくれた








「何だ?」








旅館から出る時三蔵に声を掛けられた
…が








「いえ、何でも」









と後で話すればいい
と濁した







.

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