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吹っ切れた、ハズ


「あははっほんと似合ってるよ」


こいつ……さっきからずっと笑ってやがる。
終始笑い声を絶やさないコプチェフを睨み付けながら腕を組む。今の俺の姿はさながら、シンデレラの意地悪な姉Aといったところだな。


「いつまで笑ってんだよ」


出来上がった衣装を着せられて、練習のストレスもあり俺の機嫌はいつにもまして悪かった。
幸い今はコプチェフしかいないからまだ耐えられるが、さすがにこれを覚悟なしでクラスの奴らに見られたらたぶん立ち直れないだろう。
そんな俺の心境をわかってか口元の緩んだコプチェフがからかってくる。


「みんなに見せに行く?」

「行くわけねぇだろ」


俺はドレスを着たままなのにも関わらず、いつものようにどっかりと座り込んだ。本物がやってたら確実に王子様はドン引きだと思う。
するとそんな俺を見たコプチェフが、汚さないでよねという声と共に困ったような表情を見せた。


「ボリスってば、白雪姫はそんなことしないよ?」

「俺は白雪姫じゃねぇっつーの」

「役に入ってもらわなきゃ」


不満気に眉を寄せたコプチェフにお前は監督か、と呟いて欠伸をする。
あー眠ぃ。そういや昨日寝たの遅かったな。


「なに、リアル白雪姫? 寝てれば? 王子様呼んでくるけど」

「こんなとこで寝るかよ。ばーか」


俺は側に置いてあった小道具のりんごを手に取ると、目の前の憎たらしい男に向かって軽く投げつけてやる。直後、りんごはぱしっと小気味いい音をたててコプチェフの手に収まった。





(ボリスもう恥ずかしくないの? あ、もしかしてそのドレス気に入った?)
(吹っ切れたんだよ!)

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