日差しが眩しい、真昼の暑い夏。
 自棄に人通りの多い道路の真ん中で、


 一人の少年がスーツ姿の男に拳銃を突き付けられている。


 あまりにも目立つ為か、周りには人集りが出来ていて、好奇や侮蔑の混ざった視線が少年を射抜く。しかし、少年の瞳は揺らぐことがない。

 辺りを見渡すと、その男に庇われるようにして突っ立っている青年と泣き崩れるその少年の母親とそれを支える父親がいる。

 俺の身体はまるで金縛りにでもあったかのように動かない。いや、動いてくれない。

 その近くにはグチャグチャになった自転車と少し前の部分が潰れた自動車があり、アスファルトは真っ赤に染まっている。


 交通事故の現場。しかし、足から多量の血を流しているのは少年の方である。


 何故少年に銃が向けられているのか?

 それを知る隙を与えないかのように、その男は唐突にこう言う。


『……何か言い残す事は無いか』


 それに対して、少年は、


『………僕以外の人には…危害を与えないと約束して下さい。…お願いします』


 と、それだけ言う。
 その顔は真剣そのもので、肯定以外何一つとして受け付けないとでも言いそうな顔である。


『……フン、まあ良い。その生意気な面はムカつくがその約束とやらは聞いてやるよ。俺にも"情け"って奴があるんでね』


 そう言うと、少年は嬉しそうに笑って手を上げる。そして、それを確認した男は無言で引き金を引く。

 その瞬間ふと我に返った俺は、全速力で走り出した。


 間に合ってくれ…頼むからッ……!


『……兄さん……ッ!』

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