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20XX年.08.31


大都会東京。

温暖化のせいで進んだこのクソ暑い中、俺は此処に派遣された。

高いビルが連なり、沢山の人の群れが足を止めることなくそのビルへ向かって歩いている。

その中で今回俺がココに派遣された原因の人物を探す。




Dr.MIHUNE
医者 男性 


今回の依頼人の情報のすべてである。

仕事上俺がそれ以上を知る必要は無く、知りたいとも思わない。

それらしき人物を見つけすぐに其方へ向かう。

「Ciao. Mifune(こんにちは御船)」

その男は突然話しかけたのにも関わらずぴくりともせずに挨拶をされた。

「Ciao.
Sei una persona di S?
Fa in due persone di solito senti i doveri?
(こんにちは。
キミは、Sの方かな?
通常任務は2人だときいていたが?)」

その上厭味ったらしく相方の遅刻を指摘され少し眉間にしわが寄ったのが自分でも分った。

(なんで俺はH(あいつ)のことになると感情が湧くんだろうか。)

そんな疑問が頭によぎりながら、用意ておいた言い訳を御船にする。

「Da allora in poi solamente io sono abbastanza per la conferma.
 Perché io sono agitato notevolmente.
(依頼確認は私だけで十分です。
  目立っても困りますから。)」

俺の相方H(ヘビー)は同職の中でもかなり目立つ風貌をしている。

それを知っての言葉だろう。

今回俺が派遣された理由も、この男の裏にあるんだろうと察しがついた。

「Andrai poi?(ではいこうか?)」

御船に促されるまま後ろをついて人ごみの中へ紛れ込んでいった。

――――

高級感のある店の個室。

しかし、目の前に並ぶのはダミー(偽物)のみ。

職業柄このような物のリアル(本物)は食べ慣れている。

それを分ってなのか、御船は楽しそうに見ている。

「一番隊隊長が直属にきてくれて光栄だよ。」

依頼人と外で話す時は、イタリア語、それがこの世界でのルールであり、室内でも盗聴器、カメラなど何もないことを確認してから日本語で話を始める。

面倒ではあるが職業上仕方がないのだろう。

「いえ、ご期待に添える仕事はしたいと思っています。」

淡々と答え、口に料理を運ぶ。

「今回の依頼は、大宮の重要機密の書類を盗んできて欲しい。」

大宮…今の日本の総理大臣のバック。

以前も一度大宮と関わったことが合った。

だがそれだけで、俺らが派遣されるものか…

「しかし、問題があるんだ…
 もう一部の書類は処分されているらしい。
 残っているのは大宮泰三の頭の中に…のみの情報もあるんだ。
 …わかるな?」

御船の口元がにやりと上がった。

分っていてこの反応だ。

楽しんでやがる。

その反応に顔色一つ変えずに答える自分に気色悪いとも思う。

「えぇ、吐かせればいいんですね。
 そちちらは一応得意分野です。」

「そうだろうね。
 SとH君たちのコンビは本当に最高だよ。
 君たちに頼めて本当に光栄だ。」

本当に心にあるのか分らない言葉を安々しく吐く男。

それを気にせず最後の一切れを口に運んだ。

「では、俺は失礼します。」

ガタリと立ち上がると御船に手を掴まれる。

「まだ、デザートがあるが?」

また御船の口角が上がった。

「いえ、明日の準備もありますし、Hが待っているんで。」

そのまますたすたと部屋を出ていく。

店を出ればまだ蒸し暑く、しかし、店の前に泊まっている見覚えのあるバイクを見つけて少し口元が緩んだ。

バイクからおり、ヘルメットを脱いでこちらへ向かってくる金髪の青年。

「H、いつからいたんだ?」

「ついさっき。ごめんね、遅くなって」

にこりと笑って俺を抱きしめる、金髪のピアスの穴が異様に多い眼帯。

こいつが俺の相方、H(ヘビー)だ。

俺は飛行機で来たが、こいつはこのバイクがないといやだからといってフェリーで来た。

そのための遅れだ。

抱きしめられたまま上で匂いをかんでいるHが気になる。

「どーかしたか?」

「S…薬盛られただろ?」

Hは鼻が効く。

人間とは思えないほどに、多分改造人間なんだろうが…

その言葉に黙っていると、Hがため息をついた。

「遅効性だから自覚はねぇか…ホテルに急ぐぞ」

そう言ってバイクに乗せられ、泊まる予定のホテルとは逆に向かった。

Dr.MIFUNE





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