Metempsychosis
Material Note

転生したその先で

自分の泣き声に驚いて、涙は見事に引っ込みました。

そして視界に入るむにむにの手から察するに、どうやら生まれ変わってしまったようです。

前世の記憶を持っているというのとは、少し違う気がしますけど。

とりあえずの現状を受け入れて、私を不器用に抱っこしている(今にも落とされそうで非常に怖い)若者さんを見上げて見る。

若者さんは私が泣き出したせいか、随分傷付いたらしいです。

最初のにやけ顔はどこへやら、それはもう素晴らしい悲嘆顔になっていますし。
失礼とは思いましたが、その悲嘆顔は大変面白く、思わず笑ってしまったんです。

そうしたら若者さんが今にも昇天しそうな…ん、訂正、全開(全壊)顔になりました。

正直その顔は受け入れ難いものがあり、私がぐすっと眉を顰めれば、またしてもズガーンと悲嘆顔に。

…少し面白いので、からかってみます。


にこっ
でれーん
ぐすっ
ズガーン!
にこっ
でれーん
ぐすっ
ズガーン!
 ・
 ・
 ・


そろそろ飽きたと思った頃、若者の傍に誰かが近付いてきました。
現れたのは、若かりし日の母によく似た女性。
そして彼女の秀麗な唇から紡がれた言葉に、私の思考は停止しました。

「愛鈴は随分と黎深殿が気に入ったようじゃな」

─────微妙です。




再執筆 20080716
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