青年三白眼





 その日、マチュアはある決意をみなぎらせていた。

 “上”からの命令でチームを組むことになった、八神庵。彼のプレイスタイルや人となりについては、大会中に観察していたりでだいたいのことは分かってはいたが、同じチームを組んだからには多少の親睦くらいは深めておきたい。いや、あわよくば弱味の1つくらいは握りたい。

 庵の留守を確認し、掃除をしに来たと見せかけるハタキを手にして勝手に部屋へと入りこむ。

 屋探しはチームメイトの特権である。

 探そう、探そう。

 八神の秘密。

 鼻歌も口ずさみつつ、軽やかな身のこなしで部屋のあちこちをあさってはみるが、これと言って面白いものは何もない。むしろ物がなさすぎる。

 マチュアは思いきって押し入れに手をかけた。律儀にしまわれている布団の奥を探ると、固い物が指先にふれる。

 ごくりと息を飲み込んだ。

 さすがに庵と言えども年頃の青年である。色々とはしたない本の1冊や2冊あってもおかしくはない……キャラクター的にはおかしい気がしないでもないが、意を決して本を引きずり出す。

「……」

 果たして、中から出て来たのは“HOW TO 日常会話”だの“人気者になれる! 話し方”だの、表紙に描かれたいかにも陽気なアメリカ人と言ったキャラクターのイラストが見ていて逆に悲しくさせるようなタイトルの本だった。

「……」

 入り口に人の気配を感じ、振り返る。

「や、八神……」

 今にも怨念の1体でも召喚しそうな面持ちの庵が立っている。マチュアは何事もなかったかのように本を元の場所に戻し、声をかけた。

「オ、オロチ様が生卵を送ってくれたんだけど……」

「……いらん」

 庵は短く答え、あっさりとマチュアを追い出してしまう。閉ざされたドアにすがりつき、マチュアは力なくうなだれた。

 八神が……離れて行く。

END


元ネタは私屋カヲル先生の「少年三白眼」というマンガです。

この話にバイスさんは出てきませんが]Vでの八神チーム復活バンザーイ!


20100711 UP






 

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 NOVEL / KQ 



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