予感


部屋の片付けも終わり、気づけば夕方。
おばあちゃん家な二階から見える景色は、とっても綺麗だった。
アルプスの少女ハ◯ジに出てくる、干草のベットが置かれたあの空間に酷似していた。
さすがに干草のベットとヤギはいないのだけれど。

おばあちゃんの家の正面方向にある窓からは田園風景が広がり、森がある方向には竹林や砂利道が見えた。

「珍しいべ?都会じゃ見れないもんな」

おばあちゃんが麦茶を持って、二階に上がってきた。

「ありがとう、おばあちゃん。別世界にいるみたいで、すごく楽しい」
「そうかい。そりゃいがったなぁ」

おばあちゃんが氷の入ったグラスに麦茶を注いでくれる。
氷がピシッと音を立て、カランと少し傾く。
私は一言お礼を言い、乾いた喉を潤した。

「#名前#ちゃん、あの森に一回でもいいがら行ってみさいん。もっと珍しいもん見れんだがら」
「珍しいもの?なに?」
「いーっぱい動物がいんだ。こんなちっこいのから、こーんなでっかいのまで」
「あははっ、アバウト過ぎるよ」

でも、お母さんもさっき車の中で言ってたっけ。
あそこの森には色んな動物が住んでるって。
色んな動物か…。
野生の動物を間近で見たことなんて、動物園以外ではなかったな。

「#名前#ちゃんもあの森さ行っでみだら?」
「えっ、ダメだよ。部屋は片付いたけど、夕食の手伝いとか…」
「今日は昨日張り切って作りすぎだおかずがあんだ。心配しなくでいいんだよ」
「そうなの?」
「んだよ!あの森さ行って、しばらくお世話になりますって挨拶してぎな」
「ふふっ、うん!そうする!ありがとう、おばあちゃん」

私はさっそく森へ行く準備をする。
日焼け止めや虫除けスプレーは一応持ってきてるけど、今日は面倒だからいっか。
どうせ汗かくし、肌がベタつくのも嫌だからね。
私は手持ちのポーチに携帯と母から貰ったお守りを入れ、おばあちゃんの家を飛び出した。

森へまでの道のりは、片付けをしながらおばあちゃんに教えてもらったから大丈夫。
森への道は一本道だし、迷うこともないだろう。

うさぎとか、狐とかに会えるのかな?
どんな動物に出会えるだろう。
近所の子どもたちも遊んでたりして。
そしたら、一緒に遊んで仲良くなりたいな。

沢山の期待を胸に、私は森へと続く道を急ぐ。
なんだか今日は私にとって、特別な日になりそうな気がして、途中急ぐ足がスキップに変わったり、無意識に口角が上がっていたのだった。




  
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -