「結城、よろしく頼む」
応接室まで続く廊下を歩きながら、ふと、担任の言葉を思い出した。
──なんて不運な人生なのだろう!
神様に喧嘩を売ったつもりも、何か余程恨まれるような事をしたつもりもないのに。
四月。
最高学年であり、中学最後のクラス替えで仲良しの友達と同じクラスだと喜んでいた矢先の出来事。
不運にも、クジで決まってしまったクラスの学級委員長という役職に落胆していた事に追い討ちをかけた担任の一言が、正にそれだった。
「よ、よろしく頼むって……」
苦渋を浮かべ、さも自身も被害者であることをアピールする担任に同情を通り越して落胆してしまう。
──明らかに被害者は私だ。
そう、被害者は葉月なのだ。
担任から頼まれた仕事。
それは、先生しか知らないクラス分けの結果である。
葉月は正直にいうと気が付かなかった。
いや、彼が何処かのクラスに振り分けられていたことすら知らなかった。
“雲雀恭弥”という生徒が、クラスに所属しているなんて。