数回ノックされると、聞き慣れた少しのんびりとした声が聞こえた。
「すみません。雲雀さん、いますか?」
「いるよ」
返事を合図に「失礼します」と声が聞こえると、応接室のドアがゆっくり開かれる。
雲雀はその相手が応接室に入る事を特に気にするわけでもなく、寧ろ見向きもしないで、風紀委員の仕事の資料を整理し続けた。
葉月も、慣れたように今日クラスで配られたプリントを資料の横に置くと、自身を見もしない雲雀に事務的な言葉をかけた。
「今日配られたプリント、置いておきますね」
勿論、返事があるはずもなく、用事だけ済ますと葉月は応接室を出ようとドアノブに手をかける。
が、ガチャリと音を立てて、先にドアノブが動きドアが開かれた。
「委員長、見付かりましッ……おっと」
カーテンが風に揺れて擦れる音と、下校する生徒の声が遠くに聞こえていた割と静かな応接室に、少し息をきらせて勢いよく入って来た草壁に葉月は避けきれず正面からぶつかってしまい。
ドンッと、その同学年にしては逞しい胸に思わず抱き混まれてしまった。