「結城さん?悪い、気付かなかった」


草壁の大きな手と、逞しい腕で支えられ、葉月はカァッと頬を染める。


「だ、大丈夫!ごめんね、草壁君。ありがとう」


にこりと微笑むと、草壁の返事も待たず慌てて応接室から出て行った。


「……草壁」


「はい?」


慌ててはいたものの、静かに閉められたドアから視線を雲雀に戻すと、そこには資料から視線を草壁に向け、革張りのソファーの背もたれに肩を預け脚を組み直す雲雀が。
若干、その眉間に皺が寄せられていることに慌てた有能な副委員長は、次の台詞に思わず驚いてしまった。


「今の子──」















葉月はハァハァと息を切らせながら教室まで急いで戻ると、熱の上がった顔を落ち着かせるためペットボトルのお茶の残りをゴクリと一気に飲み込んだ。


心臓がドクドクと五月蝿い。
早鐘を打つそれを何とかしようとしゃがみ込み、目を閉じる。


頭の中がぐるぐると回転する。
何故こんな反応をしているのか、何が原因なのか全く理解出来ない。


ただ、雲雀と応接室で顔を合わせたのは初日以来、始めてだった。


──帰ろう。





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