(過去と未来の境界線対)
長期の仕事を終えて。
疲れと君不足により、今にもどうにかなりそうな僕の意識。
でも、あと少し。
少しの我慢で君の笑顔にまた会えるんだ。
こんな子供じみた感情を、決して口には出さないけれど。
何時だって一生懸命僕を理解しようとしてくれる君に。
本当に、早く会いたいよ。
ねぇ、葉月。
君もそうだと、証拠のない自信が溢れてくるんだ。
君は僕の妻でも恋人でもないのにね。
感情だけが先走りする。
車は哲に任せて、懐かしい並盛神社の鳥居をあくまでも何時ものペースで潜れば。
風紀財団のアジトの中、遠くから聞こえる足音に。
ドクリと心臓が高鳴った。
「お帰りなさい、恭弥さん」
開けられる襖に、君の影を見付けた所で。
ボンッと嫌な音が鳴った。
僕の気分が急降下するのも無視して。
「だ、大丈夫ですか、雲雀さん!?」
いやに高い君の声。
“雲雀さん”なんて懐かしい呼び名。
何年前に名字で呼ぶ事を禁止したかもう記憶にないけれど、久しぶり過ぎる約束違反に少し悪戯心を刺激された。
煙の隙間から見えた君の身体を、グイッと力で抱き寄せれば。