「何これ」
「ほ、報酬です」
二十三時を回る頃、仕事を終えた雲雀が報告のために結城家を訪れると、大量の料理がダイニングテーブルを埋めつくしていた。
仕事後のはずなのに、出掛けた時と全く変わらないピシッとしたスーツにワイシャツ。
ネクタイの乱れなど、全く見受けられず、サラリーマンでもこうはいかないだろうと葉月は思わず尊敬してしまう。
だが、当の本人は眉間に皺を寄せているだけ。
「誰がこんなに食べるの?無駄遣いと計画性のない人間はボスに向かないよ」
「……すみません。でも日持ちするものばかりなので、残ったら明日以降に私が食べますから」
ボスになったつもりも、なるつもりも全く無いなんてとても言えず、葉月は幼い子供のようにシュンとうなだれてしまった。
高い金額など払えるはずもない少女の、精一杯の報酬と。
日持ちする和食の中にあるハンバーグ。