気まぐれだった


私は自分の現在も過去も未来も恨んではいない。
“そういう”人間として育てられ“そのような”教育しか受けてこなかった。
だから街中を走り遊ぶ子供達を見ても、同年代くらいの女の子達を見ても、もっともっと年上の人を見ても、羨ましいなんて感じたことはない。


寧ろこの感情は好奇心だ。
私の生きる世界に対して、また、人間に対して。


私が創る匣リングは一体どういう人に渡され、どういう風に使われるのか。


そんな些細な好奇心。


そしてそれは本当に気まぐれに生まれた感情。
たまたまクライアントとして訪れたヒバリと呼ばれた相手に対して。


「あの、気付いてますよね?」


闇夜の街中はお世辞にも安全とは言えない。
まあ拐かされたところで価値がないので意味も金銭も生まれないが。


それでも多分研究所からこうして後をつけてきた人間に気付かない程、彼は鈍くはない。
一般人の私に気付かないマフィアなんているはずがない。


「君の気配、分かりにくいんだけど。研究者のくせに何なの?」


くるりと私の方に振り返り、何時ものように顰めっ面のヒバリが、


やっぱりそこにはいた





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