「ふぅん、君が新しいボスなんだ」


自身でも予想がつかなかった。
父親がマフィアに関わっていたなんて、見たことも聞いたこともない。
ましてや毎朝、一般サラリーマンらしく、同じ時間に出勤し同じ時間に帰宅するのだから、それこそどう巧妙にやりくりしたのか聞いてみたいくらいだ。


だけれど、それを確認することも今は難しい。
何故なら両親は今朝から町内のくじ引きで当てた、ハワイ一週間旅行へ旅立ってしまったばかりだから。


「いや、ええと」


冷や汗がポタリと床に落ちる。
何も告げず旅立った父親を探してやってきた男と二人きり。
何かあるわけではないが、目付きの悪い男に関わったことなど、当然一般市民の私にあるはずもないのだ。


「彼は今ハワイなんだろう?」


「は……い」


思わず、ごめんなさい、と告げようとした時、唐突にけたたましく電話のベルが鳴った。
ビクリと身体を震わせるが、見ず知らずの男との張り詰めた空気に耐えられず、急いで受話器を取る。


「はぃ──」


「あぁ、マイ・プリンセス葉月!出てくれて良かった」


「お父さん!?」






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