国際電話らしく、電話の向こうからは英語が聞こえてきた。
けれど、問題はそこではない。
「あのね、男の人が訪ねて来たんだけど」
「そう、それを伝え忘れたんだ。彼は雲雀といってね、お父さんの部屋の机の上に封筒があるから、それを渡してあげてほしい」
「封筒?」
「茶色の大きな──」
そこまで話すとプープーと電話が切れてしまった。
どうやらあちらの料金不足らしい。
ともかく用件はわかった。
雲雀という名の男に「ちょっと待っていてください」と告げると彼の返事も待たず、書斎へと急ぐ。
封筒は直ぐに分かった。
机の上にはそれしかなく、間違えようもない。
ともかく早くお引き取り願いたい一心で振り向くと、思わず息を呑んだ。
目の前に彼が立っていたから。
私の手から、さも当たり前のように封筒を取り上げ、中身の資料に目を通す。
切れ長の瞳が左右に動くのを、じっと見詰めるしか出来なかった。
「それ、父が」
「そのようだね」
彼のその言葉に安堵して肩から力が抜ける。
良かった。
これでもう怖い人と関わらなくてすむ──