やっちまった、と気付いた時には既に時遅しだった。


何処だか詳しくは分からないくらい小さなファミリーの挑発に軽々しく乗って、カーチェイスをひとしきり楽しんだオレの“跳ね馬”は、今、とても残念な結末を迎えている。


「こりゃ廃車だな。残念だったな、ボス」


真っ赤なポルシェのエンジンを開けて、何とか奮闘すること一時間。
煙の上がるそこから、両手を広げて“お手上げ”だとロマーリオが結論付けた。


どうやら直る気配はないらしい。


ガクリと肩が落ちる。
数時間前の馬鹿な自分を叱りたい。
愛弟子には、十年間ずっと“軽々しく挑発に乗るな”とか“一度深呼吸してから結論を出せ”とか最もらしいことを言っていたのに。


西に沈む夕日が物悲しく感じる。
辺りを見回しても何も見付かりはしない。
何故なら今、オレとロマーリオは牧場の広がる程の田舎にいた。


「仕方ねぇよな。誰かに迎えに来てもらうか」


パカリと携帯電話を広げて電話帳を上から順に確認していく。
コイツは今デート中だとか、今日はママンの家に帰るとか。
一人一人の予定を思い出し、アジトからかなり遠いこの田舎まで来れる部下をチョイスする。





←|TOP


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -