“ハヅキ・ユウキ”
その名前で手が止まった。
「どうした、ボス?……あぁ、ハヅキか」
横から画面を見るロマーリオ。
「ハヅキなら空いてるだろ」と、勝手な意見を零した。
ハヅキ・ユウキ。
オレを幼少から知る、数少ない部下の一人だ。
スクアーロとオレと、学生時代を過ごした女の子。
──あれ?
チクリと胸が痛くなる。
たまにある不思議な感覚。
忘れた頃に起こる現象。
病気かと思ったが、少し前に受けた健康診断では特に異常は診られなかったことを思い出す。
勿論、心電図も。
気にしすぎか、と結論付けて、ディスプレイに映る番号を押した。
繰り返される無機質なコール。
予定でも入れてるのか、と考えたら、ガチャッと音がして機械の奥から「はい、ユウキです」と声が聞こえた。
「ハヅキか?悪いがちょっと頼みたいことがあるんだ」
「お疲れ様です、ボス。それは、今直ぐでしょうか?」
「あぁ。可能な限り、今直ぐだ」