珍しくきちんと幼稚園の制服を着ている美月。
普段は汚れるからと、私服にブルーのスモッグなのに。
紺色のプリーツスカートに白のフリルの付いたシャツ。
胸元はリボンを着けて。
先程から、そわそわそわそわ、落ち着きが見られない。
そんな可愛らしい我が子を見る草壁が、美月の頭にポンと手を乗せると、少女はようやく立ち止まり、その顔を上げた。
「おはよう、美月。晴れて良かったな」
「うん!」
にっこりと微笑む満面の笑み。
今日は美月の通う、並盛幼稚園の遠足の日なのだ。
「忘れ物はないか?」
そう草壁に聞かれると、美月はその場に座り込み、黄色の幼稚園バッグから荷物を全て出すと、
「ハンカチー、ティッシュー、すいとうー、おべんとー」
一つ一つ、きちんと草壁に見せ、忘れ物がないかを確認させながら、バッグに戻していく。
その中に、ピンク色の巾着袋があるのを見付けると、美月の顔はパアッと花を咲かせた。
「おとうさんのオヤツ、さんびゃくえん!!」