それは昨日、草壁が妻に頼まれて美月と一緒に買いに行ったオヤツだ。
一緒に算数をして買った、三百円分のお菓子。
それをヒバードのアップリケの付いた、妻お手製の巾着袋に入れたらしい。


それを大切そうにバッグに入れると「わすれものは、ありません」とニッコリ笑った。


「お父さん、幼稚園バス着たわよー」


丁度良いタイミング。
草壁は美月に黄色の帽子を被せると、玄関まで連れて行き、きちんと一人で靴を履くのを待つ。


「お父さんと忘れ物確認した?」


「うん!!」


笑顔の妻と娘を見て、草壁はアットホームな家庭に、笑顔を零し──


「やあ。今日は遠足かい?」


──そうになったのが、止まった。


「恭さん!?朝からどうされたんですか?」


まさか、玄関の外に上司がいるとは思わなかったらしい。
それも部下の家の前に、だ。


だが、当の本人はというと、草壁のことなど見もせずに、娘である美月の小さな手を、まるでお姫様にするように手に取った。


「きょうやくん!!」


雲雀の手に引かれ、軽々と抱き上げられる美月。





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