道の街灯を見ながら、どうしてこんなことになったのか。
また悲しくなってきた。
いくら私が海外派遣チームで唯一の女性だからって、ちょっとレディーファーストが過ぎると思います、マジで。
海外生活一日目。
初めての海外ギアステーションでの研修を終えて、さあ社宅に帰宅しようと地上に出ると。
ブォンと不敵な低音を鳴らしたマフィアも脱帽な、真っ黒の車が止まっていた。
なにこれ怖い。
しかもその車に寄り掛かり、いかにも“面倒臭い”と言いたげな顔で煙草を燻らしていたのは。
サブウェイボス、インゴ。
今日から私の上司になった男だ。
「遅い。ワタクシを待たせるとは随分なご身分でございますね」
「…………すみません」
たっぷり脳を働かせて、さて何時そんな約束をしたか記憶を辿る。
まあ、どれだけ記憶を戻そうが、そんな約束なんてしていないのだから結果なんてとっくに分かっているが。
「とっとと乗りなさい」
「へ?」
「そのマヌケな顔はなんですか。ワタクシが直々に送ってさしあげようと言っているのですよ」