(お探しものは愛ですか?の続き)
昼休み。
うんうん唸るクラスメイト、一人。
「さっきの公式を、ここ」
数学Cと書かれた教科書と、数字と一部の英字と記号しか書かれていない大学ノート。
大量の消しゴムのカスに、赤いボールペンの文字。
重要だ、と言わんばかりにでかでかと書かれた、公式。
進まないイコール記号の先を見兼ねて、牧愛用の銀色のシャープペンシルがこつりと、ヒントを指した。
「うん、そうだったね。ってことは……」
かりかりとイコール記号の先に連なり始める数字。
それを確認する、牧の眼鏡を通した目。
「どう?」
「そう。なんだ、出来るじゃないか」
「うん、別に数字、苦手じゃないし」
真剣だった牧の目が、丸く見開かれる。
ふと、授業中に当てられて同様の模擬問題を解いていた葉月を思い出した。
確かに、数字で困っているところを見たことは、ない。
「なんで……」
「牧くんの、公式が解けないから」
そう言うと、隣の真っさらなページに、数学ではありえない、文字が羅列されていく。