「む」
「あ、おはよう、流川君」
毎朝のように、マウンテンバイクで公園まで朝練習をしにやってきた流川を待っていたのは。
何時もはいない葉月と──
花道と晴子だった。
「流川君も朝練?」
葉月が茂みに隠れて見ていたのは、昨日、流川が花道に見せた庶民のシュート──レイアップシュートの練習をしている二人。
どうやら、晴子がコーチをしながら練習しているらしい。
「ああっ」
力んでいるのか上手くシュートが入らない花道に、悩む晴子。
「お兄ちゃん、もうちょっとなのになあ」
と、柵越しで応援する葉月。
──手が悪い。
練習する二人を見ながら“早く帰れ”と流川の脳みそが言う。
それに。
彼がちらりと見る先の彼女──葉月は、先ほどの挨拶以外、流川を見ようともしない。
花道を真っ直ぐに真剣に見て応援している。
花道は多分、知らないであろうところで。
──どあほうが。
流川は思わず溜息をついた。
葉月からすれば。
花道が想い人である晴子と練習する機会など、生涯に一度有るか無いかというくらい珍しい偶然だと思う。
バスケも上手くなって、晴子とも親しくなれれば。
妹として、これ以上嬉しいことはない。