陽の光が降り注ぐ。















「神様!!」


少女は必死に涙を浮かべ、教会の朽ち果てた像の前で祈りを捧げる。
そうした光景は此処だけに留まらず、いつも何処かで誰かが祈りを捧げていた。


貧富の差に嘆く少女は、何時もこの小高い丘の上にある、もう神父さえいない小さな小さな教会に通う。
毎日同じ服で同じ思いを祈り、そして願うのであろう。
誰とは知らぬ神に。


小さな教会は、もう屋根もなく、直接太陽の光が降り注ぎ、誰とも分からぬほどに朽ち果てた神の像を照らす。
その像に祈りを捧げる光景は、まるでそこに一つの絵を描いたような情景で、少女の清らかさを象徴しているようだった。


「神様……」


「何時まで祈るのですか?」


唐突にかけられた言葉に少女は驚き、後ろを振り向く。
振り向けば、陽の光を浴びた黒尽くめの青年が立っていた。


少女とは違う立派な服。
黒い燕尾服は上質で少しの汚れも見られない。
その服装が執事を示す事だとは分からなくとも、明らかに高貴な家の者に違いないということは少女でも分かったらしく、怯えながら立ち上がり、場所を譲ろうとする。



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