「あ……すみま、せん」


「いえ、私は祈りませんので」


では何故教会になど来るのだろうか?
それもこんな田舎の、滅びる寸前の教会に。


少女の考えを読み取ったのか、青年は、ふわりと微笑み、甘く優しい音で声を奏でながら、少女に近付く。
コツコツと響くヒールの音がやけに大きく聴こえた。


「何時も、此処に祈りに来ていらっしゃるでしょう?」


見られていたのか。
視線など今まで感じなかったため、気恥ずかしくなってしまう。
照れに頬を染め、俯く少女を見て、青年はクスッと笑った。


「何をそのように真剣に祈っているのかと思いまして」


「い、色々。パパとママが……幸せに……」


震える身体で涙を零さないように手を強く握る。
見知らぬ人に迷惑をかけるまいとしている所が見え見えだったが、反対に青年は少女の目線まで腰を屈め、優しく慈しむような手付きで少女の頭を撫でた。
涙を誘い出すかのように。


「それは大変でしたね。もう大丈夫ですよ」



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