(「紅の騎士姫」より「case25 意志」と「case26 後日」の間の話)
ヴォルフラムに背中を預け、有利を自らと彼の身体で挟み迫る相手にエモノを突き付ける。
けれど、決して身体を狙わない。
相手のエモノに確実に当て、そのエモノを真っ二つに折った。
それ以上戦えない、そんな状態に。
「リーヴェ!?」
有利はそんなリーヴェの行動に戸惑う。
コンラートの所に向かったはずの彼女が、何故今自分の目の前にいるのか。
エモノを振り回しつつ以前とは違う強烈な足蹴り。
その手法はコンラートというよりヨザックに近い。
つまり綺麗で隙がないというものではなく、粗くその場凌ぎのようなとても感情的なもの。
けれど、それは有利との誰も傷付けないという“約束”を守った手法だ。
「すみません陛下。手慣れていないものでお見苦しいですが」
「なんでだ?コンラッドは?」
頭にハテナマークが飛ぶ。
魔王として命令したはずなのに、と。
しかしその反応こそが可笑しいのか、リーヴェは不思議そうにエメラルドグリーンの目を見開いて有利を見た。
そしてそれがさも当たり前のように、
「ウェラー卿は信じるに値する人物ではないでしょうか?」
と、言ってのけたのだ。