今度は有利が目を見開く番だった。
昨日まで、いや、つい先程までコンラートに怯え拒絶していたリーヴェから出る言葉ではない。
有利の知らない、ウェラー卿コンラートという軍人がまだ戦場に居た頃の、スザナ・ジュリアという魔女が居た頃の、彼女を想像させる。
きっとこんな風に忠誠を誓い、背中を預け、戦っていたのだろう。
リーヴェという軍人は。


有利が見る限りでも、最後の一人であろう実行犯が床に倒れる。
辺りを見渡せば周りは血盟城の軍人達で溢れていた。


「陛下」


リーヴェの手が有利の頬を撫でる。
「えっ」と彼が声を出すより早く、大胆極まりない真っ直ぐなコースで有利に抱き着いた。


「……良かった、陛下」


小さく震えた声が耳元で聞こえて、有利もリーヴェの背中に手を回す。


「うん、ありがとう、リーヴェ」


“陛下”に含まれたスザナ・ジュリアのことを有利はよく知らないけれど、トクンと鳴った心臓は何となく彼女が答えたもののように感じた。
ちらりとヴォルフラムを見ると、彼もまた少し涙を浮かべていたので、やはりそういうことなのかもしれない。
そう、有利は一人結論付けた。



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