「ゆーちゃん、ゆーちゃん、お願いがあるんだけど」


部屋から顔だけ出した姉貴に、何だろうと近付いたら。
思いがけないお願いに、ちょっとおれ自身も、キュンときたんだ。














血盟城の長い廊下。
有利が今日ほど慎重に歩いた日はない。


多分どんな仕掛けがしてあったとしても、どんな危険なスパイが潜り込んだとしても。
一歩一歩をこんなに慎重に歩きはしないだろう。


「こっちはだいじょ──」


「渋谷、何やってるんだい?」


「ぎゃー!!」


漫画の懐かしいコマ割りに出て来そうな有利の驚き方に、普段殆ど動じたりしない村田も、流石に驚いたようで、眼鏡の奥の瞳をぱちくりさせた。
恐る恐る有利も後ろを振り向いて、村田だと確認すると。
相手の肩に両手を置いて呼吸を整える。


「何だ、村田か」


「失礼だなー。で、なにやってるんだい?国外まで来て忍者ごっこはちょっと難しいと思うよ」


「あれは木造だから出来る技だからね」なんて、検討違いも素晴らしいボケに、有利は合いの手を打とうとして現実に戻る。
なにせ今回は重要な任務の途中なのだから。


「コンラッド探してるんだ。見なかった?」



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