群れから外れた孤独の竜の傍に、老婆の亡骸がひとつ。彼は彼女に赤いチューリップを添えながら、大粒の涙を幾筋も幾筋も流す。
彼女の一生の半数は彼と共にあった。
言葉が通じなかったが、彼は彼女を愛した。彼女も彼を愛した。
しかし、寿命というのはどんなに彼の強靭な牙や爪でも破ることはできない。100年以上生きる竜と、100年以下しか生きられない人間。彼と彼女を引き裂いた。
彼は幾日も幾日も、彼女が好きだった真っ赤なチューリップを贈った。彼女が死して尚、愛し続ける思いをこめて贈り続けた。
彼女がまだ娘の時、頬を赤いチューリップのように染めて、言葉の変わりに彼へ贈った。真っ赤なチューリップを。―――――『永遠の愛』を。
(チューリップの花言葉…永遠の愛)