猫は虎の心を知らず、とか言うが 噂のなまえって奴に会いに来た。新入りが使う部屋に入ると、そこにはエレンの姿もあった。俺が部屋に入った瞬間、エレンがびくびくしながら敬礼をした。だが肝心のなまえが見えない。まさか部屋を間違えたなんてことはないだろう。 「・・・エレンよ」 「は、・・・はい!」 「ここになまえはいないのか?」 「え・・・なまえ、ですか」 心なしかほっとした表情を浮かべるエレン。エレンによると、どうやらなまえはまだ朝食をとっているらしい。ちっ、めんどくさい。だが、そこまでして会ったところで何をするというわけでもない。今日のところはもう会うのをやめよう。 「あ、なまえ・・・」 うしろを振り向くとそこには、調査書の写真で見た女が立っていた。思ったよりも小柄で、綺麗な黒髪をした女だった。 「え、なんで、リヴァイ兵長、が・・・?」 「・・・おまえがなまえか」 俺がここに入ってきたときのエレンの反応をそのまま再生したような顔で、なまえは慌てて敬礼をした。 「・・・」 そういえば、会った後どうするかなんて何も考えていなかった。ただ顔を見てさようなら、なんて意味がわからない。なまえは俺の答えを待っているのか、目を見開いたまま動かない。 「・・・おい、この部屋で生活しろというのはエルヴィンの命令か」 「あ・・・いえ、部屋がなかったので・・・幼馴染の部屋にと、思いまして・・・」 「幼馴染といえども、年頃の男女2人が同じ部屋で生活すると何かしら支障が出る」 「え、あ・・・はい、すみません・・・」 「だから今日からお前は、俺の部屋に来い」 ・・・なにを言っているのか、我ながら思考が追いつかないのだが、何故か。この女を傍に置いておきたいという考えが、口をついてしまった。猫は虎の心を知らず、とかいうことばがあるが、このときばかりは俺でさえも自分の気持ちがわからなかった。 20130702 ×
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