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雲雀家の屋敷は森の奥にひっそりと人目を避けるように建てられていた。こんな辺鄙な場所にある理由は群れを成すことを極度に嫌う彼の性格からではない。
付近に住まう住人は厭う。

――彼処には獰猛な獣が放し飼いにされていると。
間違えて彼の敷地内に踏み入ってしまった暁には生きて帰った者はいないと。

現在の屋敷の主は雲雀恭弥。
恐ろしく美しく、まるで研ぎ澄まされた剣のような危険な雰囲気を纏う彼は出会った者の死に目を楽しげに看取るかの如く酷薄な笑みを浮かべるという。

―――そんな彼が白昼堂々と、
明らかに嫌そうな顔をしながら大の大人1人が悠に入れる大きな鳥籠の中に幼い見目麗しい少女を入れながらその目の前で日本酒を煽っているだなんて誰も知るまい。


「いいかい、君は愚かな直系一族の中でも群を抜いて頭が悪い」
「ひゃい」
「それでいて君は力だけはやはり直系らしく馬鹿みたいに強いから困った君の家族が人間界で自由に生きている僕の元へこの鳥籠ごと運んできた。…真面目な話をしてるから取り敢えずそのアイスの棒は早く片付けて。咬み殺すよ」
「……はい」
「君は人間界は初めてだったね。本や学校の教育で習ったような貧相な人間は、少なくとも今から行く僕達の界隈には1人もいない。どういうことかわかるね?」
「…ごはんが、ない」
「うん。僕も、君のために餌の調達はしない」
「!お母さんが恭弥さんのとこへいけばお腹いっぱい食べさせてくれるって」
「嘘ついてる顔ぐらい身内なら分かりなよ。」
「私おうち帰りたい」
「100人の人間の生き血を啜る。僕達吸血鬼は群れを成し血を濃くするべく家族婚を繰り返していく種族だけど、これはその種族の定めから抜け出すための、自由になれるための約定だ」
「私、家族婚でいいよ。お父さんの子供産むから」
「うん、でも皆がお前はいらないって言ってるから僕のところに運ばれたんだ」
「恭弥さん私を雇いませんか。直系の肉体は美味しいですよ」
「性欲はあるけど食欲はそんなになくてね。君みたいなトロくさい子は趣味じゃない」
「がびーん!」
「直系は確かあまり血を吸わなくても生きていけるらしいね。つまり君はこの先1人で細々と狩りを行って生きるか、100人の血を啜って吸血鬼の負の枷を取っ払うかの二択だ」
「強い人間無理怖い灰になる」
「だけど力の強い人間の血なら二人三人で終わるかもしれない」
「!」
「……分かった?」
「強そうな人にお願いして血を吸わせてもらったら私は自由?」」
「うん。どんな貰い方であっても血には変わらないからね。僕はその方法気に食わないけど」
「毎日ひきこもり生活して課金もぼこすかやっても怒られない?」
「うん」
「最近はスクス〇も始めてサトカ萌えし過ぎてLoVAまで始めたけどハイスペックのパソコンも買ってもらえる?」
「うん(知らないけど)」

「……私、頑張る!」


「こうして吸血鬼少女は自由の身になるべく、人間の世界へと足を踏み入れたのでした……ってう゛お゛お゛い゛!何俺に読み上げさせてんだ三枚下ろしにすんぞお」
「ししし。はっじまーるよーん」




(人間界でボンゴレ雲の守護者として地位を確立させた吸血鬼雲雀氏の元へと送られてきた悪魔谷に住まう吸血鬼貴族の直系の娘さんが力を使いこなせない上に頭が悪かったのでお山の大将のところへ送られるお話 の前話)

(吸血鬼ヒロイン)
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