47

それからディーノさんがロマーリオさんと合流出来たのは一時間程経ってからだった。
その間雑貨を見たり、本屋へ行ったりと完全に私の買い物についてきてくれて、買うものがあるたびにカードが使えるところとあればレジで出そうとしてきたりと熾烈な争いが繰り広げられたから大変だった。家具とか高価なものは先に買っておいて正解だと思った、本当に。

全ての買い物を終えてベンチで座る私達。
前を歩くおば様達が私達をみては頬を染めて二度見しているけど確実にディーノさんだなあ。確かにこんな綺麗な人がアイスなんか食べてたら気になるよね、うんうん。あ、またこぼしてる。ハンカチで拭いてあげるとヘラリと笑みを浮かべて「ありがとな」って可愛すぎて仕方ない。

「お前みたいな可愛い妹が居たらなあ」
「…お兄ちゃんはこのデパートの中だけですよ」
「そうだったな!」

ディーノさんみたいな兄が居たとしたら各方面に自慢するんだろうな…この世界においては私は会わないと決めている強そうな兄がいるのだから余計にそう思ってしまう。

「ディーノ!」

ディーノさんと話しながら気が付けばデパートの外へと歩んでいた。入り口のところでスーツ姿のダンディーな方がいらっしゃる。ロマーリオさんだ。

これでさっきまでちょこちょこドジしていた彼ではなくなるということは少しだけ残念でもある。何もないところで転びそうになったり、雑貨を見てたらうっかり手を滑らせて落としそうになったりとその都度それなりにフォローは出来たけどディーノさんを見ていると本当にヒヤヒヤしていたものだ。

「お、ロマーリオか。随分探したんだぞお前ら」

探された方だろうなあ、と思いながら私もロマーリオさんに対して軽く頭を下げた。どうやら私の話はしていたらしい「ボスが世話になったな」と頭を撫でられる。
隠しもしていないのか良く分からないけどとりあえず「ディーノさんってボスなんですか?」とお約束の一言に明らか慌てた様子のお兄さん二人が可愛い。

「あ、いや、その」
「ディーノ兄」

そんなやりとりを止めたのは小さな、でも凛とした声だった。

パッと声の方を見れば大きな本を抱えたシマシマのマフラーの少年。大きな目がとても可愛いその子は見覚えがあったけど彼の視線は私に向けられることはなかった。
え、もしかしてこの子。隣にいるディーノさんが心の底から嬉しそうに笑みを浮かべ「フゥ太じゃねーか!」と声をかければ呼ばれたフゥ太くんもちょこちょこと走ってディーノさんへの元へと駆け寄った。

「お嬢さん並盛なんだろ?帰るだけって聞いたし乗っていきな」
「え」
「ゆう、折角だし来いよ」

どうも彼らは人のいう事を聞くつもりはないらしい。
おいでおいでといわれ人生初の外車に乗った。あ、というかこれ私の世界だと確実に誘拐で捕まるんだけど。まあいいか。

ディーノさんの運転も、ロマーリオさんがついているから一安心だ。

「格好いい車ですね!」
「ゆうも運転とか興味あるのか?」
「はい!早く乗りたいですねー今は自転車だけが手段なので」

元の世界では運転免許は一応持っているんだけどね。
一生外車なんて運転する機会ないんだろうなーなんて興味津々に運転席を見ていれば後部座席で隣に座っているフゥ太くんが私をその大きな目でじぃっと見ていることに気付いた。

…この組み合わせで会うとは思わなかったけど、ね。
こんにちは、とちょこんと座る彼に挨拶をすると小さく挨拶を返されてからふいっと顔を背けられてしまった。あれ、小動物で人懐こいイメージだったけど人見知りなのだろうか。ツナにはもう会っている時期だったっけなあ。ちょっと悲しい。

ぼんやりと外を見ているとあっという間に並盛中学校が見えてきた。電車だと時間がかかるけど車だと本当直ぐだった。
そういえばやっぱり外車なんて珍しいもので走行中や停止中もよく知らない人に見られていたけれどクラスメイトとか含まれていなかっただろうか。
どうかツナたちには見られませんようにと思いながら運転席へ身を乗り出す。

「ディーノさん、ここで大丈夫です」
「えっ家の近くまで」
「家、あそこなんです。ここから細道なので。この車では多分厳しいと思いますし…」

ディーノさんが車を停めてくれたことを確認してからシートベルトを外して荷物を持った。忘れ物、なしと。
あんまりにも並盛に近いから風紀委員にも見られていないかも怖いなーなんて。多分ディーノさんと恭弥が知り合うのってもう少し後、だった気がするし。

「今日はありがとうございました!ロマーリオさんもありがとうございます。フゥ太くんも、またね!」
「またなーゆう」
「…ばいばい」

荷物を両手に持って買ってもらった服がシワになっていないかちらりと確認したけど問題なかった。よかったよかった。
ディーノさん達を乗せた真っ赤なフェラーリが遠退いて見えなくなったのを確認してから私も家へと向かって歩き出した。
――ええ、もちろん申し訳ない事に今教えた家は全然違うところで、学校の中を突き進んで違う門から帰るという手法をとるつもりだ。休みの日なのに学校が開いているってありがたいなあと思いながら私は裏門を潜った。



「なあロマーリオ」
「ん?」
「リボーンに言われて様子を見に来たが…彼女をどう思う?」
「ありゃ普通の礼儀正しいお嬢さんだろう。ボスがあの子ぐらいの時はもっと情けなかったけど」
「…っ、だよなあ。リボーンの奴、あの子の情報だけじゃなく実際会ってみてくれっていわれたけどよ、普通の子すぎて逆に申し訳ないぜ」

そんな会話が成されていたことなんて知るはずもない。


「……ディーノ兄、僕あのお姉さん苦手だな」
「そうか?いい子なんだけどなあ」
「…非表示だ」
「?」

  
[TOP]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -