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桐島フランは黒曜高校同じく2年、クラスも一緒で2度目の席替えも私の隣を陣取る女子から圧倒的な支持を得る男子生徒だ。
新聞部の取材からも全てをトップシークレットで答えたにも関わらずこれがまたミステリアスな雰囲気を助長させ今では軽く追っかけやらファンクラブがあると密やかな噂になっている。

ついでに告白の数も数え切れずといった羨ましい限りのことだけどお断りの言葉が全て「妹が彼氏できるまでは独り身でいるんでー」と訳の分からない決まり文句にしているらしい。妹さんを引き合いに出されて本当に可哀想だなあと同情もしたくなるけどその妹というのが私だ。

もちろん私とフランは容姿も全然似てなければ両親が同じでもなく、完全に他人である。それでもこれもフランの幻術なんだろうか、私達双子の転校生です!なんて大嘘をついているにも関わらず誰もそれに対して突っ込んでは来ない。
妹溺愛の兄、1人じゃ何も出来ない妹。そんな風に皆には思われているだろうけど今のポジションは良くも悪くも無いのでそのままにさせてはいる。
フランだってたまに教室で私をからかう事がなければ別にいい子なのだ。口が悪いことだってもう慣れたものである。

「…何見てるんですかー?」

おかげさまで、私は未だに友達がいない。否、それに関しても別にフランさえ隣にいてくれるのであれば良いんだよなあって思えるあたり私も大概他人に関しては興味が無い。

昼休みの屋上、誰も来ないようにこれまた幻術で工事中につき立ち入り禁止なんて大嘘も大嘘な看板とテープをつけているらしくこの場には私とフラン以外に誰もいない。
誰の目も無いと分かればフランはころりと態度を変え、お弁当を食べている私の膝に頭を置いてお行儀悪くサンドイッチを頬張っていた。ちなみにリンゴの被り物は膝枕には邪魔だと判断したらしく私の隣に置かれている。幻術だから消せばいいものを何故かこれに対して愛着があるのか、それともこれが彼の修行なのか私には想像もつかない。

「何もないよ」
「…さっきの、怒ってますー?」

どうやら怒られるという自覚があっただけマシだろうか。
少しだけ目を伏せたフランが少しだけ可愛かったから許してあげようと思える程度に、私は彼に甘い。お弁当を食べ終わって片付けると頭を撫でた。艶やかなその髪はさらさらと流れ、羨ましいったらありゃしない。

「フランが居なきゃダメなのは本当だし、怒ってない」
「…そうですよねー」

さも当然とばかりに返してくるけど、少しだけ目が不安げに泳いでいたことに気付かない訳がなかった。いつまでも冷静沈着であらねばならない完璧な術士にはまだ少し、早いかなあなんて上から目線。

それでも私の言葉に嘘がないことは分かったらしく嬉しそうに膝に擦り寄せると残りの時間はただ静かに目を瞑り、私もまた彼の頭に手を載せながら微睡むのだった。

昼からはまた3度目の席替えがあるらしいけど、きっと彼のお得意のズルと幻術で私の隣を陣取るんだろうなあ、なんて思いながら昼休みは刻々と過ぎていく。

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