3


 どうやら鳥籠自体が特殊なものだったらしい、最新の科学の代物なのだろうかそれを解体できるような専門家はヴァリアーにはいなかった。
 ナツを鳥籠から出した後に各々が全力で蹴ったり、ナイフを突き立てたり、はたまた術をかけたり鳥籠の中も、それから銀の檻も傷付けることは無く「売れそう」とマーモンが興味津々になっただけだった。

「ねえ、ナツこれもらってもいいかい?」
「…あ、うん!」
 
面倒臭いことは極端に嫌うマーモンがナツに話しかける程度にこれは金になりそうな代物らしい。最初はおとなしく頷いたナツだが、その後でも、と少しだけ言葉を濁らせた。

「それが私のお部屋だって恭弥さんに言われたから、私のお部屋が」
「…えーすくんってわっかんねー」

 どうやらこの呼び方を考えるに父親ではないらしい。が難しい話をしたところでこんな子供が分かるわけが無いだろう。座り込みナツのしょぼんとした顔を見ていたベルは少しだけ考えたがやがて子供の黒髪をわしゃわしゃと撫であげた。
 ベルだって面倒臭いことは好きじゃない。でもそれより面白くなりそうな予感もするし、何てったってXANXUSが自分に任せたのだから見るしかない。楽しげに笑みを浮かべながら「仕方ねーなー」と口にする辺り少しだけ捻くれている。

「ナツ、俺、ベルってんの」
「べる?」

「そ。で、あれがオカマ」
「んまぁひどい!私はルッスーリア。ルッスと呼んでちょうだい」
「るっす」

 その次に、とベルが動かす指を追って黒い瞳がマーモンを見る。
 とは言え彼の顔はフードで覆われているので目が合うことは無かったが。

「あれが金にがめつい赤ん坊」
「ムム、名前がかすってもないよ。僕はマーモンだ。君に金はなさそうだけどあれをくれるなら多少サービスしてあげるよ」
「まーもん」

「でさっき落ちた変態は一応レヴィって名前があるけど変態でいい」
「れびい」

 べる、るっす、まーもん、れびい!
 繰り返し口の中で言いながら名前の主―レヴィは未だ強制退室だったが―を見て把握したらしい。
 にっこりと笑みを浮かべてよろしくお願いしますとベルの手を握りながら挨拶を口にしたのだった。

「でー、お前の部屋は今日から俺のとこな。よろしく、ちびっ子」

 雲雀ナツ、本日よりベルフェゴールの相部屋である。


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -